濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
メイウェザー狂想曲は何を残した?
那須川天心TKO劇の衝撃と“謎”。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2019/01/07 17:00
“ザ・マネー”フロイド・メイウェザーに真っ向勝負を挑んだ“神童”那須川天心。しかし向き合うと凄まじい圧力を感じたという。
マッチメイクや企画への批判が飛ぶ。
那須川が“完敗”を喫すると、さっそくマッチメイク、企画そのものへの批判が飛んだ。
メイウェザーは最大でスーパー・ウェルター級(69.85kg以下)の世界タイトルを獲得しているが、那須川は55~60kgのあたりで試合をしてきた。今回の契約体重は66.7kg。メイウェザーはリミットちょうど、那須川は62.1kgでクリアしている。
試合当日は減量が済んだメイウェザーの体重が増えていただろうから、計量時以上に差があったはずだ。
「やってみるまで分からない」試合だった。
通常のボクシングやキックボクシングではありえない体重差。グローブハンデがあったものの、軽いほうが相手のルールで闘う。「キック1発5億円」の反則罰金も話題になった。
しかもメイウェザーは単なる“強豪ボクサー”ではない。オールタイム・ベストの1人なのだ。
無謀だった。やってはいけなかった。危険すぎる。那須川に勝ち目などあるはずがなかった。そうした声が噴出した。まあそうなるよな、と思う。しかし試合前とはだいぶ違うな、とも思う。
実際にエキシビジョンが始まるまで、騒がれていたのは「メイウェザーは本当に来日するのか」であり「真面目にやる気はあるのか」だったはずだ。
筆者はネット番組などで、メイウェザーvs.那須川について「やってみるまで分からない」と言い続けてきた。
メイウェザーのファイトスタイルからして“何をもって真剣とするか”は微妙だし、公式戦でも“省エネファイト”があるのが格闘技だ。だからやってみるまで分からない、ただKOありのルールでの“体重差マッチ”なのだから安全面、ストップのタイミングなどはデリケートに扱ってほしい。そう言うにとどめた。