濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
メイウェザー狂想曲は何を残した?
那須川天心TKO劇の衝撃と“謎”。
posted2019/01/07 17:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Susumu Nagao
キャリア50戦全勝、世界5階級を制覇し引退したボクサー、フロイド・メイウェザーは12月31日、さいたまスーパーアリーナで開催された『RIZIN.14』に出場した。リングで行なったのは那須川天心とのボクシングルール3分3Rのエキシビションマッチである。
結果は1R2分19秒、3度のダウンを奪ってタオル投入を呼び込んだメイウェザーのTKO勝利。ただし、エキシビションのため両者の公式記録には残らない。メイウェザーの戦績は50戦のまま、那須川も無敗のままだ。
以上がメイウェザーvs.那須川についての“事実”である。
あとのことは、とりわけメイウェザーがどういう気持ちでこのエキシビションに臨んだかは想像するしかない。
彼は那須川を倒した後にリング上でマイクを握ったし、インタビュースペースにも現れた。しかし口から出たのは定番の謝辞と那須川への激励。「コンタクトスポーツにはいい時も悪い時もある。テンシンにはこれからも頑張ってほしい」という言葉から読み取れるものは限りなくゼロに近い。
その言葉から読み取れたものは?
記者からの質問は受け付けなかった。
「みなさんに敬意を表すため」インタビュースペースに来たものの「アメリカに帰ったらパーティーだから」と空港に向かったのである。
この一戦、最初から「どうなるんだ?」、「どういうつもりなんだ?」の連続だった。
試合はエキシビション、しかし主催者は「真剣勝負」であるとアピールした。那須川もKOを狙う、一太刀浴びせると意気込んでいた。一方のメイウェザーは最初から「これはエンターテインメント」と言っていた。「9分間、相手の周りを動き回る」という発言もあった。
「相手の周りを動き回る」=「まともにやるつもりはない」ということか。
しかしメイウェザーは技巧、特にディフェンスに秀でた選手である。那須川のパンチを完全に封じれば、それも「真剣に勝負した」ことになる。