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伊調馨のラスト10秒逆転劇を呼んだ
第1ピリオド、川井梨紗子の「1点」。

posted2018/12/25 17:00

 
伊調馨のラスト10秒逆転劇を呼んだ第1ピリオド、川井梨紗子の「1点」。<Number Web> photograph by AFLO

鮮やかな逆転劇を見せた伊調馨。普段はクールだが、今回の勝利の瞬間は表情を崩した。

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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AFLO

 いったい誰がこんな展開を予想していただろうか。伊調馨と川井梨紗子による新旧女王対決は『全日本レスリング選手権』(12月20~23日・駒沢体育館)で2度も行われ、最後に笑ったのは伊調の方だった。

 12月23日に行われた決勝トーナメントFINAL。伊調は残り時間10秒というところでバックを奪うことに成功し、劇的な逆転勝利を収めるとともに前日の予選リーグでのリベンジに成功した。

 よほどうれしかったのだろう。その刹那、いつもは勝っても感情を露にしないのに、雄叫びを上げるとともにガッツポーズをとった。

 振り返ってみれば、闘いは予選リーグの前日に行われた組み合わせ抽選から始まっていたように思う。ふたりがエントリーした57kg級は当初8名による通常のトーナメントで争われる予定だった。

主導権を握ったのは川井。

 しかし、2年連続この階級で世界選手権に出場していた坂上嘉津季が棄権したことで出場選手は7名に。そこでルールにのっとり、試合形式はノルディック・システムによる3名と4名に分かれた予選リーグ+決勝トーナメントという方式に変更された。後者では各リーグの1位と2位が準決勝を争う。ふたりは同じ3人枠のリーグ戦に入った。

 22日に行われた4年ぶりの対決は川井に軍配が上がった。お互い激しくスピーディな手さばきによって繰り返しフェイントをかけていくが、どちらともバランスを崩さない。そうした中、じわじわと試合の主導権を握っていったのは川井の方だった。

 対する伊調は相手のプレッシャーが強すぎたせいか得意のカウンターを狙えない。さらに待ちのスタイルが消極的と見なされ、アクティビティタイム(30秒以内にどちらかに点数が入らなければ、タイムを課せられた選手の相手に1点が入る)によって2点を失ってしまう。

【次ページ】 第2ピリオドに入ったスイッチ。

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