Overseas ReportBACK NUMBER
サッカーで米留学する日本人が増加。
文武両道はアメリカでこそ成立する。
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byUniversity of South Florida
posted2018/11/18 08:00
南フロリダ大学に留学してプレーをする高瀬和楠選手。まっすぐプロを目指す、だけではない生き方もあるのだ。
サッカーをツールにして奨学金を得る。
留学ってお金がかかりそう、そう考える人が多いはずだ。確かに普通に留学する場合は多額の費用がかかる。しかし、スポーツでの奨学金制度を利用すれば、費用を低く抑えることができる。
アメリカではスポーツに秀でた学生にも奨学金を支給するが、内訳は授業料、教科書代、寮費、食費、健康保険、生活費など。入学時に初年度の支給額が決まり、翌年からは活躍度によって支給額が増えたり、減額される仕組みになっている。日本への里帰り費用やお小遣い以外は、大学が全額サポートの選手も存在する。
前述の草宏禎は「今まで一生懸命やってきたサッカーをオプションとして奨学金を獲得することに使うことで、金額的にも留学が現実的なものとして考えられました」と言う。
スポーツをツールとして利用し、奨学金をもらってアメリカの大学に進学するという考え方はカリブ海諸国、ヨーロッパ、アフリカなどの選手に共通する考えでもある。将来を見据えた場合、アメリカの大学を卒業すれば自国での就職でも何らかの形で有利になるからだ。
学生アスリートの文武両立は当然。
「10月に試合が4試合あった週もあり、勉強との両立が大変でした。遠征のバスの中で課題を行うなど工夫しました」と草宏禎は話す。
全米約1100の大学が所属するNCAA(全米大学体育協会)の規則により、学業成績が悪い場合、試合への出場はもちろん、練習参加にも制限が課せられる。競技結果が良くても単位を落としたり、留年した学生は奨学金支給がきられる。
4選手がプレーするサッカーシーズンは8月から11月まで。その間、平日を含む週2日は試合がある。授業に出られない場合、レポート提出などでカバーすることもできるが、学生アスリートだから授業もレポートも免除というような優遇措置はない。
単位を落としたら、サッカーはおろか、大学に残ることさえ厳しくなる。学生たちが必死に勉強するのも当然だ。遠征中の移動や休憩時間に教科書にかじりついたり、レポートを書いている学生をよく見かけるのも、アメリカならではの光景だろう。
もちろん勉強で苦労している学生には、必要に応じてチューター(家庭教師のような存在)がつき、補習をしてくれる。4選手ともこのシステムを「ありがたいし、素晴らしいシステム」と話す。スポーツも勉強も全力で。それが彼らに課せられた使命でもある。