第95回箱根駅伝(2019)BACK NUMBER
決着のポイントは山下りの神?
隠れた勝負所は「6区」だ。
posted2018/11/08 11:00
text by
別府響(文藝春秋)Hibiki Beppu
photograph by
AFLO
「山を制する者は箱根駅伝を制す――」
そんな格言が語られるようになったのは、いつの頃からだっただろうか。
“山”とは箱根駅伝における特殊区間の5区と6区のことを指す。平地での速さだけでは対応することができない異質の区間として、各大学ともに重要視し、1年かけてスペシャリストの育成に励むチームも少なくない。
特に5区の山上りで快走を見せた選手は、「山の神」という二つ名とともに、一夜にして全国レベルのスターになる。駅伝ファンならずとも今井正人(順大卒/現トヨタ自動車九州)、柏原竜二(東洋大卒)、神野大地(青学大卒)といった名前は耳にしたことがあるだろう。だからこそ、最近は箱根の“山”といえば5区を指すことが多くなっていた。
だが、実は近年の箱根路を振り返ってみると、面白い傾向が見えてくる。
ポイントはズバリ「6区の重要性」だ。
6区で好走を見せ続ける青学大。
例えば、昨季箱根駅伝4連覇を達成し、今季も優勝候補の筆頭に挙がる青学大を例に見てみよう。
前述の神野が驚異の区間記録をマークし初優勝を飾った第91回大会こそ5区でも区間賞を獲ってはいるが、実はその後の3大会での区間成績は2位→8位→5位と山上りではそれほど圧倒的な強さを見せているわけではない。むしろ神野が抜けた後の直近2大会を見れば、優勝チームとしては低調な成績とすら言えるだろう。
一方で山下りの6区では91回大会以降、区間1位と2位以外獲っておらず、いずれも区間記録に迫る、もしくは上回るような好走を見せて、後続チームに1分近い大差をつけている。
東洋大に往路で先行を許した前回大会も、原晋監督は往路終了時点で「この差なら6区で間違いなく逆転できる」と自信を持ってコメントすると、言葉通りにあっさり逆転してみせた。早大から33秒リードで復路に入った前々回大会も、6区でライバルを大きく突き離し、事実上の勝負アリを決めたのだった。
往路が終わった時点では「上手くいけば王者・青学大を倒せるかも――」と思った両校に引導を渡したのは、山下りで生まれた大きな差だったのである。