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日本がアジア大会で得た「収穫」と「課題」。
東京五輪のクライミング初メダリストは誰だ。

posted2018/09/14 11:00

 
日本がアジア大会で得た「収穫」と「課題」。東京五輪のクライミング初メダリストは誰だ。<Number Web> photograph by AFLO

日本がメダルラッシュを演じたアジア大会は9月2日の閉会式で幕を下ろした。

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津金壱郎

津金壱郎Ichiro Tsugane

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AFLO

 メダル獲得以上に大きな収穫を手にした。

 日本選手団が金75個、銀56個、銅74個と総数205個のメダルラッシュを演じたアジア競技大会で、初めて実施されたスポーツクライミング複合(ボルダリング、スピード、リード)でも、野口啓代が金メダルに輝いた。

「今シーズンの目標がアジア大会の優勝だったので、すごくうれしいです。大きな自信になりました」

 そう喜びを語った野口は、予選初日のスピードで11位と出遅れたが、予選2日目のボルダリングで3位になって総合7位に浮上。予選最終日のリードで2位になり総合3位で、予選上位6選手のみで争う4日目の決勝に駒を進めた。

 1日のうちにスピード、ボルダリング、リードの順に3種目を行う決勝でも、野口は苦手にするスピードで苦戦。予選では11秒30の自己ベストをマークしたものの、最初の種目で6選手中最下位と後手を踏んだ。

野口が初代アジア女王の座に君臨。

 複合種目の成績は、各種目の順位をかけ算したものが総合点になり、この点数が低いほど上位になる。

 残り2種目での挽回を期した野口は、続くボルダリングで今季のW杯年間2位になった実力を存分に発揮。6選手中ただひとり全課題を完登して1位になると、最終種目のリードでも2位になった。

 総合点を12ポイント(6位×1位×2位)に抑え、韓国のサ・ソルと並んだものの、同点の場合は直接対決で勝った種目数の多い選手が上位になるルールによって、初代アジア女王の座に君臨した。

 ただ、2年後の東京五輪を見据えれば、喜んでばかりもいられない。

 今年6月に岩手で開催されたコンバインド・ジャパンカップの優勝後に野口は、「やっぱりスピード。9秒台に近いタイムを出さないと、自信を持って世界とは戦えないと思う」と口にしていたが、改めてアジア大会でもスピード強化の課題が浮き彫りになった。

【次ページ】 あと2年で1秒近く削り取れるか。

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