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日本がアジア大会で得た「収穫」と「課題」。
東京五輪のクライミング初メダリストは誰だ。
text by
津金壱郎Ichiro Tsugane
photograph byAFLO
posted2018/09/14 11:00
日本がメダルラッシュを演じたアジア大会は9月2日の閉会式で幕を下ろした。
あと2年で1秒近く削り取れるか。
昨年から本格的にスピード強化に取り組んでいる野口は、アジア大会前の7月末からの合宿の成果を自己ベスト更新に繋げたが、今シーズンに入ってから本格的にスピード強化に乗り出した各国ライバルたちの叩き出すタイムに比べると、野口としてもうかうかしていられない。
リード種目の世界的な第一人者で、アジア大会では複合銅メダルを獲得したキム・ジャーインは、今季7月に初めてW杯スピードに出場して12秒95をマークすると、アジア大会の複合予選で10秒49を記録。わずか2カ月足らずで記録を2秒以上も縮め、野口のベストタイムとほぼ変わらない領域に達している。
野口は6月時点で目標タイムを、「9秒台に近いタイム」と語っていたが、もはや複合種目のスピードは9秒台でなければ勝負にならないレベルになりつつある。ボルダリングとリードで世界五指に入る実力を持つ野口にとっては、東京五輪でも大輪の笑顔を咲かせるためには、ここからの2年間でスピードのタイムをあと1秒近く削り取ることが求められる。
もうひとりの日本代表の伊藤ふたばは、予選はスピード9位、ボルダリング7位、リード4位で、かろうじて総合6位に滑り込んで決勝に進出。決勝ではスピードとリードで4位、ボルダリングで2位と健闘して総合4位となった。
今回の結果をバネにして、今後伊藤が奮起することを期待したい。
男子は韓国のチョンが圧巻の金。
男子は予選4位通過の藤井快が銀メダル、予選トップ通過の楢﨑智亜が銅メダルを獲得した。
藤井は予選のスピードで23選手中17位と大きく出遅れたが、ボルダリングで6位として総合12位にまで挽回すると、リードで2位になり決勝に進出。決勝ではスピード5位、ボルダリング3位の総合4位タイで迎えた最終種目のリードで、意地を見せて1位になって総合ポイント15点にとどめて銀メダルを獲得した。
楢﨑は予選ではスピード6位、ボルダリング1位、リード1位と安定した強さを発揮したが、決勝では、4位だったスピードでのミスが響き、ボルダリング2位、リード2位で総合ポイントを16点として藤井に逆転を許して銅メダルに終わった。
その決勝で圧倒的な強さを発揮したのが韓国のチョン・ジョンウォン。決勝ではスピード2位、ボルダリング1位、リード3位の総合ポイント6点で金メダルを獲得した。
これまでスポーツクライミングは、オリンピックもアジア大会も無縁なものだったが、今大会に初めて採用された。チョンは高いモチベーションでここに挑み、実力的には遜色ない藤井や楢﨑よりも輝くメダルを手にした。