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“ハーフ”アスリート増加の一方で。
日本が本当に多様化するためには。 

text by

及川彩子

及川彩子Ayako Oikawa

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photograph byAbaca/AFLO

posted2018/08/11 10:30

“ハーフ”アスリート増加の一方で。日本が本当に多様化するためには。<Number Web> photograph by Abaca/AFLO

ドイツ代表引退を表明したエジルは、トルコのエルドアン大統領との2ショットが一部から批判の的に。

人々の心に潜む優越性や劣等感。

 英語に「Hypodescent(ハイポデセント)」という言葉がある。これは異人種同士の両親を持った子供が、社会的階級が低い親の人種の方に分類されるという意味を持つ。

 対義語には「Hyperdescent(ハイパーデセント)」があり、こちらは異人種同士の両親を持った子供が、社会的階級が高い親の人種の方に分類されるという意味になる。 

 異なる国にルーツを持つ選手に対して見下すような発言をする人は、「Hypodescent(ハイポデセント)」の考えを持ち、自分(もしくは日本)に優位性を感じているのだと思う。逆にハーフや帰化選手は身体的もしくは遺伝子的に有利だと信じ、「ずるい」などという発言をするのは、何らかの理由で劣等感に苛まれているから、とも考えられる。

 余談になるが、身体的に恵まれているハーフや帰化選手もいるかもしれない。しかし本人や家族、コーチなどを含めた周囲の人々の努力やサポートがなければ、世界で戦うレベルには到達しないはずだ。才能だけで戦えるほどスポーツの世界は甘くない。

日本が本当に多様化するには。

 東京五輪、パラリンピックを2年後に控え、「多様化するスポーツ界」というようなタイトルでハーフや帰化選手を紹介する記事が見られる。様々なルーツを持つ選手が日本代表として活躍していることを紹介するのは世間における認知度を高める助けもあるだろう。

「ウルフ、茉秋、馬瓜…だから日本代表 東京五輪への思い」(朝日新聞 2017年10月31日)

「国境のない東京五輪(上)ハーフの意識 なかったね 開幕あと2年」(東京新聞 2018年7月24日)

 筆者も平昌五輪の際に様々なルーツを持つアメリカ代表についてコラムを書いた。フィギュアスケートやスピードスケートにアジア系の選手が多いことを興味深く思ったからだ。

 一昔前はアメリカのフィギュアスケートは白人選手が上位を占めていたが、ここ数年はアジア系の選手が目を見張るような活躍をしている。アメリカ人の友人たちに意見を求めたところ、「アジア系の選手は努力を惜しまないし、地味な練習をコツコツ頑張るイメージがある。また親も子供の夢を全力で応援しているからではないだろうか」と分析していた。

 アスリートの努力を認め、彼らのルーツや文化を理解し、敬意を見せるのは、とてもアメリカ人らしい考え方だと感じた。

 だが、この手の記事は書かれた側の受け取り方によって差別になることもある。自身も含めてより丁寧に扱っていくべきトピックだ。

【次ページ】 「多様化」はもっと広義の意味。

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