燕番記者の取材メモBACK NUMBER
ヤクルトの「新・勝利の方程式」。
石山、近藤、中尾が開花した瞬間。
posted2018/06/16 07:00
text by
浜本卓也(日刊スポーツ)Takuya Hamamoto
photograph by
Kyodo News
物事が好転する時には、必ず要因がある。交流戦で好調のヤクルトだが、5月29日の開幕までは6連敗を2度も喫する17勝26敗1分けの最下位。借金も9と、上昇ムードをつかめずにもがき苦しんでいた。
それが突然、交流戦で流れが一変した。過去13年間で勝ち越しは3度だけ、昨季は5勝12敗1分けと96敗の大失速を招く一因となるなど、パ・リーグとの戦いは苦杯をなめさせられてきた。
今年は180度、違った。ロッテ戦から7連勝を決めるなど白星を量産し首位に立つと、10日オリックス戦に勝利して9年ぶりの勝ち越しを決めた。小川淳司監督は「投手陣がよく頑張ってくれて結果も出ている」と目尻を下げた。
交流戦前はリーグワーストの4.54だった防御率は、10日時点で強打のパ・リーグ相手に2.70と12球団トップで、交流戦全11試合が6回まで3失点以下。好転の要因は明確だった。
誤算から生まれた勝利の方程式。
「何が変わったというわけではないんですけどね」
田畑一也投手コーチは、苦笑を浮かべた。「先発も中継ぎも、みんなよく頑張っている。打線もしっかり打って点を取ってくれている。投打でやるべきことができているからね」と前置きしたうえで、「強いていうなら……」と続けた。
「石山、近藤、中尾。リリーフが踏ん張ってくれているのは大きいね」
今のヤクルトの勝利の方程式は、“誤算”から生まれたものだった。開幕前は、昨季66試合登板の石山泰稚、侍ジャパンの一員として昨春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)を経験した右のサイドスロー秋吉亮の2人をセットアッパーに、スプリットが武器の新外国人マット・カラシティーを守護神に据える構想を描いていた。
だが、青写真は開幕早々に狂った。シーズン開幕後から、秋吉の調子が上がらない。カラシティーも5月1日に、二軍で再調整をすることになった。勝ち試合を確実にものにするために構築した必勝パターンは、開幕1カ月で白紙に戻った。