マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
スカウト100人集結の「持ってる男」。
ドラ1候補、辰己涼介の肩・足・力。
posted2018/06/19 08:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
11日に始まった「全日本大学野球選手権」は、東北福祉大の優勝で17日に幕を閉じた。
毎年のことだが、この大会は実に興味深い。
軽い前評判が聞こえていた選手が、実際にプレーを目にしたら本当は「とんでもないヤツ」だったり、思ってもみないチームから「ええっ!」と驚く逸材が飛び出してきたり。そういう意味では、たとえば夏の甲子園よりずっとスリリングな大会になっている。
昨年の大会では、岡山商大から剛球右腕の近藤弘樹(楽天1位)と蔵本治孝(ヤクルト3位)、岐阜経済大から快速アンダーハンド・與座海人(西武5位)が登場した。
低めの速球とフォークに抜群の制球力を発揮して東北福祉大を5安打完封した四国学院大・小久保気は、西濃運輸へ進んだ。
もっと振り返れば、八戸大(現・八戸学院大)・秋山翔吾(現西武)が東洋大の速球左腕・乾真大(元日本ハム、巨人)の内角速球を、わずかに上体を後ろにずらすようにしてスイングする空間を作り、強引に引っ張ることもせず、バックスクリーンの右に運んだのもこの大会だったし、三重中京大・則本昂大(現楽天)が大阪体育大から20三振を奪いながら、タイブレークの10回にワイルドピッチで敗退したのも、この「全日本大学野球選手権」(以下、「大学選手権」)だった。
スカウト100人が東京ドームに集結。
今年の大学選手権は、雨で始まった。
アウトドアの神宮球場は順延になり、インドアの東京ドームだけで初日が行われたので、この大会を心待ちにしていたプロ野球スカウトたちは、全員が東京ドームに集まって、ネット裏には、陽に焼けて真っ黒な顔をした男たちがおよそ100人。
選手のお母さんたちなのだろう。息子の「晴れ姿」をネット裏から……と考えていた女性たちが、思わず立ちすくんでいた。
「だれぇ、あの人たち。向こう行こうか……」
確かに、知らない人が見たら異様な風景だったろう。
そんな中で、やはり「持ってるヤツ」は、ほんとに持ってるものだ。
神宮でも試合をやっていれば、およそ半数のスカウトはそちらへ行っていたはずだ。しかし、雨でプロの目が100%自分を向いている状況で、ここぞとばかり、持ち合わせた才能を100%彼らにぶちまけて自らを存分にアピールしてみせた学生が2人いた。