サムライブルーの原材料BACK NUMBER
中澤佑二は速度勝負になぜ勝てるか。
ハイライン守備で光る「コンマ何秒」。
posted2018/03/30 16:30
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
J.LEAGUE PHOTOS
誰かが言った。
筆者も思った。
今季から横浜F・マリノスを率いるアンジェ・ポステコグルーが設定する「ハイライン」に、中澤佑二はマッチするのか、と。
空中戦には滅法強くとも、背後のスピード勝負になると苦しいのではないか、と。
その答えは、実際のパフォーマンスを見てもらえばよく分かる。
1-0で今季初勝利となった3月18日、アウェーの浦和レッズ戦。
背後の広大なスペースを守り、ボールのつなぎ役も担うゴールキーパーの飯倉大樹、左サイドから中に入ってアクションサッカーの切り込み隊長となる山中亮輔も確かに目を引く。だが最も感服したのは最終ラインを統率するボンバーの奮闘ぶりだった。
相手をオフサイドにかけるハイライン。
前年まではラインを低く構えて両ワイドの「個」で勝負するカウンターが軸だっただけに、スタイルは180度に近い方向転換である。まだまだ初期段階であって攻守において全体的にうまくいかない部分はあるものの、中澤は水漏れしないようにと脇目もふらず働いていた。
前半だけで6度、オフサイドの網にかけた。サイドの裏に出ると全力で戻り、クロスに対応する。相手の前に入ってクリアすれば、次は相手に体を寄せてゴール前でミスを誘う。
守備でもひと苦労のうえ、GKからのビルドアップではサイドまで目いっぱい開いてサイドバックを押し出してつなぐ。とにかく良く動き、良く走る。40歳の鉄人は、息を切らすことなく一連の業務を淡々とやってのけていた。
代表ウイークに入った中断期間に、横浜の練習に赴いた。
練習後、3時間近く待って意中の人は練習場から出てきた。事前の準備のみならず、ケアにも十分な時間を充てていた。新しい監督になれば当然、練習時間や練習方法も変わる。週なかばにオフが入ったり、練習メニューも読みづらくなった。