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羽生&宇野、平野vs.ホワイト。
白井健三も注目する4回転の未来。
posted2018/02/28 11:30
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
17日間にわたって行なわれた平昌五輪の取材が終わった。ナンバー本誌「平昌五輪詳報号」の記事のため、多くの競技を取材していて見えたのが、採点競技における「4」というキーワードだ。
2月16、17日、江陵アイスアリーナ。今回のフィギュアスケート男子シングルは「4回転ジャンプの争い」と呼ばれていた。連覇を果たした羽生結弦の4回転ジャンプはどれも神々しかった。
昨年11月に右足首を負傷した影響で、自身の持つ最高難度の構成にはならなかったが、それでもソチ五輪と比べると大幅な難度アップ。種類も回数も増やしての戴冠だった。
そして、羽生を抑えてフリー1位の点を出したネイサン・チェン(米国)は、4回転ジャンプを6度跳んで、そのうち5度を完璧に決めた。フリーだけなら羽生を8.91点も上回っていた。
男子シングルは、8年前のバンクーバー五輪で4回転ジャンプを跳ばないエヴァン・ライサチェク(米国)が優勝した後、4回転時代へと、大きく舵が切られた。それからの8年間は右肩上がり。バンクーバー五輪では数えるほどだった4回転ジャンパーが、ソチ五輪では半数以上になり、平昌五輪では種類や回数が増えていた。
この先に5回転はあるのだろうか?
これほど多くの選手が4回転を跳ぶ時代になったということは、この先に5回転もあるのだろうか。そんな、疑問混じりの興味が湧いてくる。
高回転ジャンプを可能にするには滞空時間を伸ばすことと、回転スピードを上げることが必要だ。現在のフィギュアスケートでは男子でも滞空時間が0.8秒を超える選手はまれだというが、陸上の跳躍系などの他競技には1秒近い選手もいる。フィギュアスケートの選手でも1秒近く跳ぶ選手が出て来ないとも限らない。
ただ、滞空時間を伸ばすには筋力が必要だが、筋肉が多ければ体重が増え、着地の衝撃が激増するというジレンマがある。それでも、例えば宇野昌磨は、4回転トゥループで回りすぎてしまうことも少なくなく、回ることだけに焦点を合わせれば可能な気はする。