箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
箱根を走れるかどうかの天王山。
学連の記録会で勝った者、敗れた者。
text by
神津伸子Nobuko Kozu
photograph byNobuko Kozu
posted2017/12/17 09:00
大学としての出場が絶たれた後、選手個人としての箱根出場が懸かる記録会。ここも、もう1つの箱根への道なのだ。
再来年の大河ドラマの主人公を生んだ筑波からは。
再来年の大河ドラマの主人公に決まっている“日本マラソンの父”金栗四三の出身校筑波から、1年生の相馬も学連チーム5番手で本戦出場を確定させた。
相馬は近藤をマークしていたが、8000m以降少しずつ離された。それでも最後の400mを64秒で走り抜き、自己記録を29秒も短縮した。レース後に、応援に来ていたチームの仲間たちから歓喜の声が上がった。
長野の佐久長聖高の出身で、4月に入学したばかりのルーキーだ。高校時代はキャプテンもつとめ、全国高校駅伝の6区で区間2位を記録。箱根予選会以降の1カ月で、3000mと5000mの自己記録も更新している。
レース前に不安を吐露した慶應のエース。
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慶應も筑波を追うように、2017年度から箱根駅伝復活プロジェクトに取り組んでいる。その初年度の目標として、学連選抜にランナーを送り込むことを掲げていた。3年生の根岸は予選会で6番手に食い込み、「緊張せず、思い通りの走りが出来た」と、笑顔を見せていた。しかしこの日はレース前に、保科光作コーチが顔を曇らせていた。
「根岸にしては珍しく、自分で大丈夫だろうか、と彼らしからぬ発言が聞かれた」からだ。それでも、次の瞬間には「でも、彼ならきっとやってくれます。いつもの走りが出来れば大丈夫」と、頼もしい言葉が飛び出した。
レースでは中盤以降、近藤、相馬らがピッチを上げていくのについて行けず、苦しい展開になった。見守る応援団は、本戦候補の16人の位置を確認し始めた。
「1、2、3人……う~ん、11、12番かなあ、このままでは厳しい。もっと上げろ!!」
ゴールタイムは、16人中11番目だった。レース後、根岸に握手を求めると、10000m走った後とは思えない程手が冷たく、顔色も真っ白だ。
「予選会前のように、今回は調子が上がって来ませんでした。でも、一生懸命走りました。後は選考を待つだけです」と一言絞り出すと、付き添う仲間と共に部室に引き上げて行った。
根岸は実は、陸上は高校でやめようと思っていたという。
「予選会に出たメンバーの中で、高校時代に最も実績が残せていないのは、たぶん自分だと思う」
しかし結果が出なかったことで逆に、「大学でも続けました」。本戦では8区を走ると言われている。