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宮里藍は松井秀喜を見ていた――。
日本を背負い戦った女性の肖像。
text by
南しずかShizuka Minami
photograph byShizuka Minami
posted2017/09/28 08:00
「まずは『お疲れさま』と自分に言いたい」とコメントした宮里。プロ転向後14年、米ツアーで12年戦ってきた32歳の言葉が重い。
「松井秀喜さんは、毎日取材に応じていたんですよね?」
2、3年前にちょっとした会話の流れで、一度だけ宮里から聞かれたことがある。
「松井秀喜さんは、毎日、取材に応じていたんですよね?」
筆者は松井氏の担当になる機会はなかったが、そういうことをメディア仲間から聞いたことがあったので「そうらしいですよ」と答えた。「なるほど」という感じで、宮里はただ頷いた。
その時は咄嗟に質問の意図を確認しなかったが……おそらくメディアを通してファンとつながる重要性を再確認していたのではないだろうか。
日本女子ゴルフ界を背負って、戦い続けてきた宮里。
2017年9月17日。
曇り空が広がるエビアン選手権の18番グリーン、宮里は現役最後のパットを決めた。
こみ上げてくる思いに耐えきれず、右手の甲で涙を拭う。
グリーンを取り囲む観客の拍手がやまない中、ゴルフ界の英雄のゲーリー・プレーヤーから花束を渡された。宮里の最後の勇姿を見届けた戦友のポーラ・クリーマー、ヤニ・ツェンも出迎えてくれて、ハグを交わした。
スコア提出を終えた宮里は、試合中に宮里のプレーをずっと観戦エリアから見守っていた中学生ぐらいの女の子を「おいで」と手招きで呼んで「ありがとう」とハグした。
最後の最後まで、気配りの人、宮里らしい立ち振る舞いだった。
サービス精神に負けず劣らず、成績も超一流だった。
日本人として初の世界ランク1位になり、日米通算24勝をあげた。宮里はスター選手という運命を受け入れ、日本の女子ゴルフ界をひっぱり、国を背負って戦い続けた。