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ダルビッシュとドジャースの快進撃。
前田健太すら巻き込まれる生存競争。 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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posted2017/08/19 08:00

ダルビッシュとドジャースの快進撃。前田健太すら巻き込まれる生存競争。<Number Web> photograph by AFLO

好投したダルビッシュを迎え入れるカーショーらドジャースの選手たち。実力派の選手が揃うからこそ、チーム内に厳しい競争も存在する。

生存競争の中で前田も柳も必死の快投を見せた。

 ポストシーズンに入れば、ここからさらにもうひとりが先発ローテーションから外される。いや、デイヴ・ロバーツ監督のことだから、先発=長いイニングという定石を無視して、試合序盤から「総動員態勢」を仕掛けてくる可能性もある。いずれにせよ、カーショー、ダルビッシュ、ウッドを除いた3人は、どんな使われ方をされるか、まったく予断を許さない。ここから先は苛烈な生存競争だ。

 ただ、こういう状況に置かれると、選手は発奮する。前田は8月1日の対ブレーヴス戦で、7回2安打無失点の好投を見せたし、柳も6日の対メッツ戦で、7回1安打無失点という快投劇を演じた。前田は、2016年のポストシーズンで、3試合に先発して防御率6.75(10回3分の2を投げて自責点8)という悪夢を体験した。首脳陣の先入観を覆すためにも8月と9月に調子を上げ、なんとか先発の一角に食い込みたいところだ。期待大のダルビッシュも……昨年のALDS(対ブルージェイズ戦)で5回5失点(被本塁打4)と乱打乱撃された過去があるだけに、短期決戦では気を引き締めてかかる必要がある。

便利屋から打線の主軸へと成長したターナーの存在。

 一方、ドジャース打線は相変わらず好調を維持している。原動力の第一は、'16年にコーリー・シーガー、'17年にコーディ・ベリンジャーと、2年連続でスーパー・ルーキーを送り出したことだ。そして第二のエンジンは、ジャスティン・ターナー(32歳)とクリス・テイラー(26歳)の進化だろう。

 ターナーは、4年前までメッツの控え選手だった。ユーティリティ・プレイヤーといえば聞こえはよいが、内野ならどこでも守れるという便利屋の扱いで、年間打率2割7分、本塁打3本程度が地相場。このままくすぶりつづけてもおかしくない選手だった。

 ところが、ドジャースに移ってからは、じわじわと力を伸ばしてきた。球団側もその成長を認めた。ターナーがFA権を取得した昨年11月直後に4年総額6400万ドルの好条件を提示して2020年までの契約を締結したのだ。今季の報酬は1300万ドル(20年には2000万ドル)。メッツ時代に比べると30倍近い金額だ。

【次ページ】 打率3割超、本塁打17のテイラーも1番として文句なし。

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