ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
青木功の右腕は元吉本興業の副社長。
「まず人を集めてからものを売る」
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byYoichi Katsuragawa
posted2017/08/01 11:00
ファンへのサインに応じる宮里優作。コースでの写真撮影はご法度だったが、こういったエリアが作られる大会も増えてきた。
放映権をテレビ局に握られ、石川・松山も生かせず。
そんな時代の流れを体感してきた橋爪氏にしてみれば、日本の男子ツアーが進んできた方向性について疑問も多かった。選手がどれだけ活躍しようが、現場からの発信力に欠けているように思えてならなかった。
日本の男女ゴルフツアーはほとんどの試合で、自前の放映権を持っていない。権利は放送する各テレビ局に帰属し、たとえばツアーのプロモーションビデオを作ろうにも各局との折衝が大変だ。そんな構造にもかかわらず、発信媒体のメインはテレビ局をはじめとした大メディア。最近までその姿勢はなかなか変わらなかった。
AON全盛の時代とは、プロスポーツ選手のカリスマ性はもとより、それを生み出すプレーヤーとメディアとファンとの距離感が違う。近年では石川遼や松山英樹といった、男子ゴルフの枠を超えたスター選手を輩出したにもかかわらず、人気は定着しなかった。
「“元”ができていないからチャンスを活かせなかった。常にビジネス面でのテーマ、危機感を抱えていれば『いまだ!』となったはずなんですが……」
プロゴルフ関連団体には、ビジネスマンが少ない?
そもそも、日本のプロゴルフ関連団体や運営企業と、他のプロスポーツ協会やチームとを比較した時の違いといえば、そこに従事する経験豊富なビジネスマンの数の差にあるように思う。
JGTOでいえば、1999年に日本プロゴルフ協会から分離して発足した後も「“いち競技団体”としてやっていくのが精いっぱいの規模だった。営利団体ではない、という意識でここまで来てしまったように思う」と橋爪氏は指摘する。
営利という視点はプロスポーツが興行である以上、無視できないはずだ。
多くの才能を見てきたからこそ「タレントも芸能人も、人に見られることで変わる。1週間あれば変わると僕は言える。見られているから『恥ずかしいことはできない、良いところを見せないといけない』という気持ちは必要」と実感する。
「まずは人(ファン)を集めることから始めて、ものを売る。それはAKBでもなんでも同じことなんです」