ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
青木功の右腕は元吉本興業の副社長。
「まず人を集めてからものを売る」
posted2017/08/01 11:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Yoichi Katsuragawa
サマーソングの定番といえば、ひと昔前まではTUBE(チューブ)だった。
バブル崩壊前後の時流で混とんとした1980~90年代。真夏の太陽のような熱量に満ちたボーカルの歌声が、人々を海辺へと誘った。
当時、若かった僕らはみんなこう思っていた(はずだ)。
「TUBEは夏しか働かない。春と秋と冬はずっとヒマなんだ」
バンドのメンバーはみな童話『アリとキリギリス』の、働きアリのような生活を地で送っているに違いない……。
まあ、実際にはそんなわけはないのだが、それほど強い“TUBE=夏”のイメージを世間に植え付けたのは、当時ソニー・ミュージックで制作に携わっていた橋爪健康(はしづめ・たけやす)氏のアイデアが発端となった。
「あの頃のレコード業界はアーティスティックな時代で、優秀なアーティストは3年か4年に1回というサイクルでミリオン(100万枚)アルバムを作っていたんです。でも、『だったら1年に1回、25万枚、30万枚売った方が上じゃないか』って。それならば、毎年夏にリリースすることを定番にしてはどうかって。だって、夏は必ずやってきますからね(笑)」
数々のヒットナンバーは、逆転の発想を持ったこんな仕掛け人によって世に生み出されたわけだ。
実は彼、今はゴルフツアー機構の副会長である。
さて、ゴルフのコラムでなぜ、こんな話題を切り出したか。
実はこの橋爪氏、今春に青木功会長率いる日本ゴルフツアー機構(JGTO)の副会長に就任した人物なのである。
吉本興業の副社長という立場から、男子ツアーに請われる形で幹部に就任した同氏は、コンテンツビジネスの分野で活躍した。同社での大いなる実績は後述するが、ゴルフとのかかわりはTUBEと仕事していたソニー・ミュージック在籍時に遡る。