Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER
日本マラソンのレベル低下に一石!
設楽悠太は「攻めて」東京五輪へ。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byManami Takahashi
posted2017/07/19 08:00
東洋大からHonda。長距離界の王道を走る設楽悠太は、そのスピードをさらに加速していこうとしている。
社会人になってから“弟キャラ”に変化が。
そんな隣で支えてくれた兄は、社会人で別のチームへと進んだ。大袈裟に言えば、人生で初めて「1人」で戦う日々に身を投じ、“弟キャラ”だったメンタルは少しずつ変化していったのだろう。設楽は言う。
「やっぱり大学は走れなくてもクビになるわけではないじゃないですか。でも、社会人になれば結果がすべて。それには『世界で戦う』という強い意志が要ると思います」
もうひとつ、設楽にとって大きなきっかけになったことがある。それが2015年に出場した北京世界陸上での経験だ。
ADVERTISEMENT
「社会人になったばかりの頃は『世界の舞台に立ってみたいなぁ』という軽い気持ちでした。でも、北京世界陸上の1万mで惨敗して、もっと真剣に世界で勝負したくなった。あのレースは人生で初めて最下位、周回遅れを経験して、悔しさだけが残った。なんとしてももう一度、世界の舞台に立ちたいという気持ちが強くなりました」
日本人に勝つことだけを考えて……では良くない。
年始の箱根駅伝という“超”大イベントが存在する日本では、大学卒業後になかなか次の目標を見いだせない有力ランナーも多い。そんな中で、設楽は実際に世界との力の差を肌で感じ、「攻め」の走りの重要性を実体験できたのだ。
「世界陸上に続いて昨年のリオ五輪にも出られたことで、目線を箱根駅伝から上げられたと思います。マラソンでも、選考レースの時は日本人に勝つことだけを考えて……という風になると、日本のマラソンのレベルも低くなりますし、競技を強くするには攻めないと、と思っています。そうしないと下の世代も強くならないので。もちろんレース展開もありますけど、攻める気持ちは忘れたくないですね」