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ラグビーの代表戦が軽くなっている?
監督が衝撃を受けた、悪しき「慣れ」。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/06/26 13:40
36歳トンプソンルークの存在感は際立っていた。ギアを入れる能力というのはW杯の経験か、個人の資質か……。
田中史朗「海外と試合することに慣れてしまったのかな」
ようやく第2戦を終えて、ゲームキャプテンを務めたリーチマイケルが、「ラグビーの原点は戦うこと。今日はよくできた」と会見で話したが、第1戦から先発メンバーを8人入れ替えるなど、ヘッドコーチの強烈なメッセージがようやく伝わったということなのか。
この激しさが、最初のテストマッチで見られれば、第2テストはより収穫が多い戦いになったと思われてならない。
激しさの濃淡について、第2戦はベンチから登場したSHの田中史朗が、試合後の取材で興味深い答えをしてくれた。
「どうして先週の試合でフワッと入ってしまったのか……僕は変わらず準備しているつもりですが……ひょっとしたら、(スーパーラグビーの)サンウルブズで、海外のチームと試合することに慣れてしまったのかなあ、と感じたりもします」
慣れ。
この場合、「慣れ」とはネガティブな意味での「慣れ」である。
サンウルブズはポジティブな効果も生んだが……。
当たり前のことだが、スーパーラグビーと国と国の代表が対戦するテストマッチは意味合いが違う。
マインドセットの面で、一段階ギアを上げなければ、第1戦のように簡単に劣勢に立たされてしまう。
ワールドカップで8強入り、その先の4強入りを見据えた強化のために、日本ラグビー界はスーパーラグビーに参戦することを決めた。今季で2シーズン目になる。
コンタクト、ブレイクダウンなど、毎週のように世界基準と手合せすることで得られるものは計り知れない。サンウルブズで活躍したことで、松橋のようにジャパンで先発を張る選手も登場してきた。
しかし、ネガティブな意味での「慣れ」が生まれてくるとは、誰も予想していなかっただろう。
改めて、首脳陣は「日本代表」で戦うことの意味を選手に周知しなければならないのだろうか?