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エディーから日本ラグビーへ提言。
「他者から学び、自ら解決せよ」
text by
竹鼻智Satoshi Takehana
photograph byTomoki Momozono
posted2017/05/09 08:00
現在はラグビーの母国イングランド代表の再建に尽力するエディー。今もなおジャパンへの愛情は強い。
勝てた試合、なんてものはありません。負けは負け。
――スクラムは劣勢でしたが、ジャパンのお家芸とも言える展開ラグビーでは見事なトライも決めた。
「チームとしての強みをテストマッチでキッチリ出せるのは、非常にいいことです。ボールを動かす展開になった時は、ジャパンのペースでしたね。こうした形でトライを取ったのは、今後へ向けたいい兆候です」
――後半残り20分余りで2トライを取っての逆転劇。
「しかし、あの時間帯のジョージアの試合運びが悪かったことも事実です。それから、大柄でパワーがあるのはいいですが、ジョージアFWのフィットネスにも問題がありました。そうは言っても、ジャパンのフィットネスが上回っていたのは間違いありません。これらの要素が重なった結果としての逆転勝利でした」
――そしてウェールズ戦。終了間際のドロップゴールでの惜敗。ジャパンが“勝てた試合”だったか。
「勝てた試合、なんてものはありません。負けは負けです。それ以上でも、それ以下の何物でもありません」
山田のトライまでのプレーは、相変わらず秀逸ですね。
――アルゼンチン戦は被トライ7、ジョージア戦に続き、ウェールズ戦も許したトライは3。ディフェンスは試合を重ねるごとに改善されているように見えた。
「ジャパンが対戦した3チームの中で、アルゼンチンの攻撃力が抜きん出ていることを忘れてはなりません。しかしながら、ジャパンのディフェンスにおける精神的な要素は確実に改善されていますし、これからも改善していくように見えます」
――現地のメディアではウェールズの不調を批判する論調も多くあるが。
「確かに、この試合のウェールズは戦術的にまずかったですね。ラグビーというゲームの普遍的な基盤として、セットプレーをしっかり固め、ボールを前に進め、そしてゲインライン際での戦いを支配しなければならない、というものがあります。この日のウェールズは、こうした力仕事を避けてボールを大きく動かし、結果としてジャパンの強みである部分に勝負を挑む、という戦術になっていました。賢いラグビーをしようとしたつもりでしょうが、実際にはこれが原因で接戦にもつれ込む結果を招きました」
――ジョセフHCが掲げるディフェンスシステムは、ボール保持者の外側から内側に追い込むシステムで、実際にこの守り方から山田章仁のトライに繋がった。
「ディフェンスライン全体のスピードが重要なこのシステムは、ジャパンには合っていますね。ボール保持者に効果的にプレッシャーを掛け、ミスを誘う。こぼれ球を上手く拾ってトライまで持っていった山田のプレーは、相変わらず秀逸ですね。彼はこういう状況でトライを取る能力を持った選手です」