スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
俊輔、清武、乾より大フィーバー。
地元が待ちわびた柴崎岳デビュー戦。
posted2017/03/21 11:40
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
AFLO
理想のデビュー、というわけにはいかなかった。
3月19日、柴崎岳が初出場したテネリフェ対レウス戦は、0-1でアウェーチームの勝利に終わった。テネリフェにとってはこれが今季のホーム初黒星。同時に、年明け以降続いていた無敗記録も11戦で途絶えてしまった。
この試合の後半29分、4-4-2のドブレピボーテの一角に投入された柴崎は、久々の実戦感覚を確かめるように丁寧にボールをさばきながら、約19分間のプレータイムを過ごしていた。
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デビュー戦を白星で飾れなかったことはもちろん、引いて守る相手を押し込み続ける展開が続いただけに、もう少し相手ゴールに近い位置でチャレンジするプレーが見られなかったのは残念だ。ホセ・ルイス・マルティー監督も試合後の会見で以下のように語っている。
「もう少し前のゾーンでプレーしてもらいたかったが、ボール欲しさに引きすぎていた。彼を起用したのはラスト数メートルでパスを通す能力があり、ボールを散らして相手の守備を揺さぶれる選手だからだ」
無言を貫いた本人をよそに、情報がひとり歩き。
結局、この試合で大きなインパクトを残すことはできなかった。それでも、デビューに至るまでに予想外の遠回りを強いられた彼が、この試合でようやく新天地での第一歩を踏み出せたことは事実である。
確実視されていたラスパルマス移籍が暗礁に乗り上げ、隣島テネリフェの2部クラブと契約したのが1月末のこと。その後はやれ体調不良で体重6キロ減だ、やれ不安症でホテルから出てこないだ、やれ謎のバルセロナ訪問だと、無言を貫く本人をよそに情報ばかりがひとり歩きしてきた。