Number ExBACK NUMBER
監督・ジダンのサッカーとは何か。
恩師デルボスケたちに聞いてみた。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byDaisuke Nakashima
posted2017/02/14 07:00
史上初めてCLとW杯、ユーロの3つを制した監督であるビセンテ・デルボスケ。現在は講演などを行う日々だ。
「このチームに先発と控えはない」は絶対に嘘。
ハメス問題にはじまり、イスコ問題、モラタ問題と、次々に何かが取りあげられる。マドリーのベンチに座るのは、たいていのクラブであれば主力としてプレーできるようなスターたちだ。控え選手の不満を抑え、モチベーションを保たせるのは、ベルナベウのベンチに座る監督に必要とされる能力だろう。
トニは続けた。
「サッカー界に存在する、最大の嘘を教えてあげよう。“このチームには先発と控えなんてない”という監督の常套句だ。しかしそんなわけはないだろう? どんな監督の中にも、ベースとなる選手はいるんだ。もちろん、ビセンテにもいた。しかし我々は決して嘘はつかなかった。控えの選手に“ジダンとフィーゴがいるから出場機会は限られる”とも伝えた。その場しのぎの言葉は選手にとってプラスにはならない。大事なのは人間として正しくあること。
ADVERTISEMENT
ジダンも、モラタやハメスには状況をしっかり伝えていると思う。誰だって先発としてプレーしたい。しかしピッチに立てるのは11人だけ。そんな現実がある中、最後に監督と選手をつなぎとめてくれるのは、人間として正しくあれるかどうかなんだよ」
モウリーニョにはなく、ジダンにあるもの。
銀河系時代のマドリーの広報部長を務めたホアキン・マロートは、レアル・マドリーで、CLで優勝する監督には、ある共通点があるという。
「好戦的でないこと。監督として自分を押し出しすぎないこと。人としてまっすぐであること。デルボスケ、アンチェロッティ、ジダン。彼らにはそれがある。一方で、モウリーニョやベニテスにはそこが欠けていた」
デルボスケだけでなく、アンチェロッティも、ピースメイカーと言われたその包容力でロッカールームを掌握した。シーズン後に解任されることを知ったクリスティアーノ・ロナウドが「来季も一緒にやりたい」とツイートしたほど、選手との間に強い信頼関係を築いていた。
ジダンはそんなアンチェロッティの下でプレーもし、監督アシスタントとしても帯同している。