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監督・ジダンのサッカーとは何か。
恩師デルボスケたちに聞いてみた。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byDaisuke Nakashima
posted2017/02/14 07:00
史上初めてCLとW杯、ユーロの3つを制した監督であるビセンテ・デルボスケ。現在は講演などを行う日々だ。
「私は自分のサッカーより、チーム状況を優先した」
フィーゴにラウール、ロナウドにジダンがいた頃の銀河系マドリー。バルサ勢を核としてワールドカップとユーロの連覇を成し遂げたスペイン代表。
デルボスケの監督としてのスタイルや個性よりも、選手やチームが思い浮かぶ。
「サッカーにはひとつのやり方があって、また別のやり方がある。どれが確実に勝てる、というものは存在しない。私は自分のサッカーというよりも、その時に抱える選手やチーム状況に合わせて柔軟に対応することを優先した。銀河系の頃は4-2-3-1の印象が強いかもしれないが、3バックもやったね。それも大一番でだ。2000年のCL決勝を思い出してくれ。バレンシアを相手に、私はエルゲラ、カランカ、イバン・カンポの3バックを敷いた。右はサルガド、左はロベルト・カルロスだ」
このCL決勝は、デルボスケが監督に就任して半年後のこと。2人とも、就任半年後にビッグイヤーを掲げたわけだ。
「ジダンは柔軟さにくわえ、思い切りもある。(1月15日、リーガでの)セビージャ戦では3バックを採用したように。あの試合は負けたから批判されているが、よく考えた末のアプローチだったと思う。4バックでいっても、勝てていたかなど分からない。批判はどんな監督にも浴びせられるもの。私はジダンの全盛期を監督として間近に見る幸運に恵まれた。それから15年。今度は監督として何を見せてくれるのか、期待している」
ジダンでなければ、ハメス問題は過熱してたかも?
長年デルボスケのアシスタントを務めたトニ・グランデは、今は育成と指導者への講演をこなしている。
立場上、常に監督側と選手側の双方からチームを見つづけてきた。彼は、ジダンとかつての恩師には共通点があるという。
「ジダンはビセンテ(・デルボスケ)に似た部分がある。特に人間的な部分でだ。あれほどの選手だったのに、監督になってからもエゴを出さずに、発言も態度も常に柔らかい。冷静で、好戦的な発言をすることもない。そういう人としての深みは、チームに伝わるもの。私はずっとビセンテと選手をつなげる立場にいたからわかる。少し前はハメス(・ロドリゲス)の不満や移籍騒動が囁かれたが、それも気づいてみれば終息した。ジダンでなければ、もっと問題は出ていたかもしれない。そんな人徳があるし、これは誰でも持っているわけではない」