マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
高校野球が人工芝でドームだったら。
再燃した人気の理由を改めて考える。
posted2017/01/25 07:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Kyodo News
新年も半月を過ぎると、そろそろ高校野球の話題がスポーツ新聞に顔をのぞかせ始める。
今年は1月27日が、春の選抜高校野球大会の出場校決定の日だ。
出場校が決まって2月になると、南のほうでプロ野球の春季キャンプが始まり、下旬にはオープン戦が開幕して、3月になればすぐに社会人野球・東京大会。
センバツまであっという間に日が経って、ほぼ同じ時期にはプロ野球のペナントレースも始まる。寒い日が続いているが、球春はすぐそこまでやってきている。
それにしても、近年の高校野球の人気はどうしたことか。
とりわけ、強烈な印象として残っているのが、一昨年2015年・夏の「清宮幸太郎人気」。さらに昨年の夏は、横浜高・藤平尚真、履正社高・寺島成輝、それに優勝投手に輝いた作新学院高・今井達也などの剛腕、快腕が居並んで、甲子園を連日沸かせたものだ。
轟き渡るようなスタンドの歓声は、今もこの耳にはっきりと残響をとどめている。
この春は、再び早稲田実業高・清宮幸太郎が登場する。例年センバツは比較的粛々と行われる印象があるが、今年はどうだろう。
“清宮・早実”が勝ち進んでいくにせよ、それを阻止する勢力が台頭するにせよ、一昨年の夏を思い出させるような、はっきりとした目に見える盛り上がりが続くことだろう。
今、高校野球といえば清宮なのかもしれない。
昨年の夏。
昼食を買いに行こうとして、熱戦の甲子園球場の外を歩いていると、
「清宮くんの試合はいつなんですか?」
上品な初老の女性から、そんなことを訊かれた。
もちろん、昨夏の甲子園大会に清宮幸太郎の早稲田実業は出場していない。しかし、今のファンにとって、高校野球とはイコール清宮幸太郎であり、イコール早稲田実業なのかもしれない。
甲子園で高校野球をやっていれば、清宮幸太郎は必ず出場して、大暴れしている。
それほどに、彼が高校野球の“シンボル”のような存在に、すでにもうなっている証拠なのだろう。