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NBAを目指した日本人が感じた事。
「上下関係や選手の萎縮が無い」
text by
林壮一Soichi Hayashi Sr.
photograph byAFLO
posted2017/01/25 08:00
合理的なアメリカスポーツの世界で、競技力を評価される前提に学力があるという事実は興味深い。
推薦で入学した大学でも、学業成績をコーチに報告。
フェザー・リバー・カレッジには、バスケット推薦で入学したものの、入団トライアウトが待っていた。しかも、「ダンクシュートができなければ、合格させない」と言われた。175センチの中山にダンクは不可能である。「自分はこのサイズなのでダンクは無理だが、一通りの動きを見てから判断してくれ」と直談判し、ガードとしてのゲームメイクを武器にトライアウトをパスする。
「バスケ推薦で入学したというのに、そんな調子でした(笑)。カレッジの成績もGPAが2.5を下回ると、バスケットがやれなくなります。毎シーズン、学業成績をコーチに報告しなければならないのです。ですから、スターティングに選ばれている学生は、日々、自分の成績を教師に聞きに行って、スコアが足りないなら補うように持っていかねばなりません」
NBAの下部組織のトライアウトで“やり切った”。
初年度、中山は一軍のベンチに入ったが、2年目は自ら選択し、二軍の公式戦に出場した。カレッジとは日本の短期大学にあたり、有望選手はNCAAの大会を目指す4年制大学に転校していく。フェザー・リバー・カレッジの男子バスケットボール部には毎年、15名の新人が入って来るが、半数強がバスケット推薦である。年間の公式戦は、およそ50。
「もう、プロの世界のようでした。毎日、練習前にロッカールームで着替えて、足を上げていれば、トレーナーが来て足首にテーピングを巻いてくれます。監督が1人、コーチが4人、体力コーチは10人くらいいましたね。
僕が一軍の試合に出られないのは、体のサイズが原因でした。ダントツで小さかった。カレッジの選手は身長に加えて横も大きくなります。カレッジは基本的に2年で卒業ですから、競争が激しかったですね。一軍に登録されるのは15人だけで、毎年、その数の新入生が入って来ますから」
中山はNBAの下部組織、Dリーグのトライアウトに挑み、3次に進めなかったのを最後に“やり切った”と感じた。
丸5年間のアメリカ生活を振り返り、中山は言う。
「先輩後輩の関係性がなかったので、そこが日本とは違いますね。自分はこういうプレーをしたいから、お前はこう動け、とか、ここでパスが欲しいって、誰もがハッキリ主張します。そこに上下関係は無い。口論にもなるし、喧嘩もしますが、皆、同じチームの仲間なんですよ。暴力沙汰とか、指導者の顔色を窺って、選手が萎縮するなんてことは皆無です。指導者と選手が服従関係ということもありません。
また、コーチたちもより良い条件の職に就きたいと、常にステップアップを狙っています。高校のコーチなら名を上げてNCAAに出られる大学で教えてみたいとか。ですから、指導力だけでなく、人間性も求められるんです」