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憲剛が「凄まじい」と驚く守備力。
大島僚太が近づく“万能”の領域。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2016/06/29 11:00
今年から川崎の10番を背負う大島僚太。「テクニックはあるけど」と言われていた姿は過去のものだ。
小林悠、大久保嘉人が認める大島の変化。
その成長は、先輩たちも認めるところだ。
「僚太が守備の部分で効いている。僚太がハードワークして、真ん中で頑張ってくれているのが大きいと思います」と小林悠が称えれば、普段は厳しいことをはっきりと言う大久保嘉人も「今まではパスを出して終わりだったけど、どんどん出てくるようになった。自信をつけたんじゃないかな」と表情を緩める。
痛恨のドローに終わった前節のアビスパ福岡戦後にも大久保は「僚太は積極的にやっていた」と労っていた。
「けっこうハードな半年でしたね」
大宮アルディージャに2-0で勝利した最終節のあと、大島はそう言ってひと息ついた。1月にアジア最終予選を終えると、今季から10番を背負う川崎で初めてとなるタイトル争いを経験した。その間、U-23日本代表の一員としてフランスに遠征し、帰国後には日本代表にも選ばれた。
なかでも「やってやろうと思っています」と珍しく気合いを覗かせた最終予選では、優勝という最高の結果をつかんだものの、同時に不動だったレギュラーから外される悔しさも味わい、それがファーストステージのパフォーマンスに繋がった面もあるという。
「フロンターレでも優勝したいと思うようになった反面、悔しさもありましたね。あんまりそういうことを意識するタイプではないんですけど、自然に、というか。そういうのはあったと思いますね」
憲剛「守備力が凄まじくなった」
大島がルーキーの頃からずっと見守ってきた中村憲剛も、確かな成長を感じ取っていた。
「まず、だいぶしゃべるようになりましたよね。今までは僕の言うことに頷いているだけだったから。自分で考えられるようになったんだと思います。それに、守備力が凄まじくなった。そんなにゴリゴリ奪える選手じゃなかったのに。その点は(エドゥアルド)ネットが横になったのも大きいと思う」
中村と大島がボランチを組むときは、どちらかと言えば中村が前に行くから、大島はサポートに回ることが多かった。だが、中村がトップ下に移った今は「自分がやらなければ」という想いが強まっているのではないか――。先輩は、そんな風に想像する。
「自分が行って、奪って、攻めて、前と後ろをつないで。僚太は今、充実しているんじゃないですか。試合中だって、今まではボールを持ったら僕や嘉人を探していたけど、今は選択肢のひとつとして僕らを捉えている。そうした変化は、受け手としてすごく感じる。まあ、もうちょっと見てくれよって思うけど(笑)」