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偉大なる室伏広治、ついに現役引退。
日本の陸上界に残した、2つの功績。
 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byYUTAKA/AFLO SPORT

posted2016/06/28 11:30

偉大なる室伏広治、ついに現役引退。日本の陸上界に残した、2つの功績。<Number Web> photograph by YUTAKA/AFLO SPORT

室伏広治、現役最後の投擲。東京医科歯科大学教授、日本陸上競技連盟理事、日本オリンピック委員会の理事なども務めあげる41歳の鉄人。

たったひとりで戦い続けたハンマー投げの王。

 他の競技と比べると、違いは如実だ。

 例えば競泳なら、この十数年、オリンピックや世界選手権でメダルを獲得する選手が常に複数名いて、その指導者がいた。勝つためのトレーニングであったり、技術を磨く術が培われている。育成の場にも、ノウハウがある。

 ハンマー投げにはなかった。

 父・重信が孤軍奮闘していたと言ってよい。

 その父に導かれるようにして始めた陸上競技。高校入学後、専門種目として取り組み始めたハンマー投げで、世界の壁にはねかえされる中、いつしか、自ら理論を編み上げていった。これまでもさまざまなメディアで何度も伝えられてきた、投網を用いたもの、新聞紙を片手で丸めるなど、独特の練習方法を編み出していった。その根底には、科学的なアプローチ、人体など幅広い分野の知識があった。

 底知れぬ探究心あればこそだった。そして、より遠くへ投げたいという向上心あればこそだった。

 それも並々ならぬレベルだったから、一流へと上りつめることができた。

最もドーピングが酷いジャンルにもかかわらず……。

 室伏には、勲章がある。

 今、スポーツ界はドーピング問題に揺れている。ロシアがリオデジャネイロ五輪の陸上競技に参加できないことが決定し、ロシアのウェイトリフティングも同様の処分を受ける可能性が浮上している。

 競泳など他競技にも波及する可能性もある。ロシアに限らず、ドーピング違反は、次々に発覚しているのが近年だ。

 ハンマー投げもまた、ドーピングに揺れてきた種目だ。

 例えば2004年のアテネ五輪では、当初金メダルを手にしたアドリアン・アヌシュがドーピング違反で失格となり、室伏が繰上げで金メダルを獲得したという経緯がある。

 今年4月には、ロンドン五輪女子金メダリストのドーピング違反が発覚。この2例に限らず、数多くの違反が発覚している。

 その中で室伏はドーピングと無縁だった。

 あるいは、世界歴代のトップリストを見ても、室伏の真価が分かる。

【次ページ】 ドーピング禍の'80年代を除き、'90年以降で2位の記録。

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