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100試合目のベストパフォーマンス。
酒井高徳がブンデスで得た存在感。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2016/03/12 10:50
ブンデスリーガ100試合出場は、日本人選手8人目。1位は奥寺康彦の234試合だ。
「死ぬほど練習した」左足は酒井の大きな武器。
酒井は右利きだが、「死ぬほど練習をした」という左足のキックの方が実は自信があるという。それゆえに右サイドにいても、何の不安もなく左足でボールを持つことができ、そのことが、中央の選手と連係して攻撃を組み立てるための大きなアドバンテージになる。もちろん、中に切れ込んでシュートを打つこともできる。
「エクダルが戻ってきたのがすごく大きいです。彼がいることで攻撃に幅が出るので、パスコースが少しずつ空いてきて、チームが自信を持ってボールを回せたと感じます」
この試合でチームが機能した要因として、まずはボランチのポジションに復帰したチームメイトの名前をあげた。そのうえで、彼はこう話した。
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「こうやって勝っている試合のなかでも、ボールが落ち着かずに行ったり来たりしているとき、守備に追われる時間が長いときには、ボールをゆっくり動かして、少し休もうという雰囲気を出したかったんです。
逆に、ゆっくりとパスを回しているときにグッと前に出て行ったり、ドリブルでしかけていったりするのも大事。要は、そういう『メリハリ』をつけたいなと。その点は上手くできたので、自分としても評価できるところですかね」
勢いに頼らず、攻撃にアクセントを加える。
今から4年前、リーグ前半戦の終了後にシュツットガルトへ移籍した年、酒井は5アシスト(キッカー誌の集計)を記録するなど、チームの勢いに乗って攻撃的なプレーを見せた。後半戦に出場した14試合で5アシストという記録は、サイドバックとしては十分すぎる結果だ。
ただ、翌年以降はチームが残留争いに巻き込まれるなかで守備に意識を大きく割かれたり、そもそも攻撃に参加する場面自体が少なかったりと、悩みながら戦っていた時期もある。
しかし今は、勢いに頼ることなく能動的に攻撃にアクセントをくわえるなど、見事な手綱さばきを見せている。円熟味を増したその姿こそが、彼が100試合にわたって積み上げてきたものの証ではないだろうか。