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100試合目のベストパフォーマンス。
酒井高徳がブンデスで得た存在感。
posted2016/03/12 10:50
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
AFLO
3月6日にブンデスリーガ通算100試合出場を果たした酒井高徳は、これまでとは違った一面を見せた。この変化は何を意味しているのだろうか。
試合前に、節目の試合だからこそゴールを決めたいと話していた酒井は、この日は前半だけで4本ものシュートを放った。
「前半の1本は、入ったかなと思ったんですけど、ちょっと欲が出過ぎましたね(笑)。ハーフタイムには監督から『今日決めなかったら、いつ決めるんだ?』ってチクっと言われました。最近は僕のところにチャンスが回ってくることも多いので、『そこで決めないで、いつ決めるんだ?』と話はされるんですけど……」
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少し照れるように語った酒井はこの日、残念ながらメモリアルゴールを決めることはできなかった。それでも、3位ヘルタを相手に隙のない試合をしたハンブルガーSV(HSV)のレギュラーとして、2-0で完勝したチームの中心にいた。
ハンブルクに来て以来のベストパフォーマンス。
シュツットガルトからHSVへ移籍した今シーズン、序盤はコンディションや試合勘がなかなか整わず苦しんだ。11月7日のダルムシュタット戦で初めて先発してからも、シーズン前半戦は好調だったとは言いがたい。しかし、2月7日のケルン戦以降は完全にレギュラーに定着した。
「この落ち着きだったり、相手からのプレッシャーの感覚は、やはり試合を重ねていかないと感じられないものなので。それを今は有意義なものに出来ています」
ヘルタ戦の後、ドイツ人記者は次のような言葉とともに、一斉に酒井のもとへ集まってきた。
「ハンブルクに来て以来のベストパフォーマンスだったね!」
両チーム最多のシュートを放ったからだけではない。この試合で、酒井はそれだけの存在感を放っていたのだ。
この日の酒井は、ポジションは右サイドバックながら、ボランチのような落ち着きをもってチームにリズムを与え、攻撃の組み立てにもしっかり参加していた。
サイドバック然とガムシャラに縦にしかける場面もあったが、中央にいる選手にパスを通したり、彼らを利用してワンツーでの崩しを狙ったりと、多彩な攻撃を披露した。