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岡崎慎司、何度目かの「得点宣言」。
便利屋とエゴイストを往復する理由。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byAFLO
posted2016/03/05 10:40
得点の機会に顔を出す能力はやはり特筆すべきものがある。バーディーの速攻ではない、岡崎の攻撃の形を作りたい。
「献身的な守備や運動量なんて誰でもできる」
今後しばらくは中位から下位のチームとの対戦が続くが、だからといって、勝利が保証されているわけではないことは、この日の試合を見れば、容易に想像できる。
そして、岡崎の存在も安泰だとは言いづらい。
なによりも6試合ゴールがない。ゴール以外の功績が認められてはいるが、苦戦が続けば、指揮官がいち早く手を打ちやすいポジションが岡崎の仕事場なのだから。
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試合を振り返って、岡崎は「めっちゃ凹むわぁ」と繰り返した。それでも「ゴールを決めるか決めないかで、俺の人生は変わるから」と強気の姿勢は変わらない。
「献身的な守備や運動量なんて、誰でもできることだから。他の選手との違いを見せつけるためには、やっぱりゴールしかない」
ドイツ時代のエゴイスト宣言とは似ているようで違う。
万能性を買われて欧州に渡った日本人選手は多い。それは、組織力を高める育成の結果でもある。日本人選手の視野の広さ、戦術理解力、カバーリング能力、走りの質の高さは、中堅以下クラスのクラブでは目を引く武器だ。しかし便利屋としての起用では、本職ではないポジションを強いられるケースも少なくない。
シュツットガルトでの岡崎がまさにそうだった。
その直後のエゴイスト宣言と今回が同じ流れにも見えるが、あのときとは立っている場所が違えば、岡崎の中に宿る執念も違う。言葉は綺麗ではないけれど、“鼻息の荒さ”があのときとは全く違うのだ。
「もっと上を目指す」
あくまでゴールにこだわり続ける岡崎。どこまでその想いにしがみついていけるのか? 彼の奮闘は、日本人ストライカーの新たなスタイルを生み出すきっかけになるかもしれない。
そして……。レスターが波乱のプレミアリーグを制することができたとしたら、それは今季の欧州サッカー界にとって最大の出来事と記録されるに違いない。