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岡崎慎司、何度目かの「得点宣言」。
便利屋とエゴイストを往復する理由。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byAFLO
posted2016/03/05 10:40
得点の機会に顔を出す能力はやはり特筆すべきものがある。バーディーの速攻ではない、岡崎の攻撃の形を作りたい。
ウェストブロムウィッチ戦で際立った“巧さ”。
3月1日。ウェストブロムウィッチを迎えたキングパワー・スタジアム。
レスター駅から徒歩で30分あまりの場所にあるスタジアムには、多くのサポーターが詰めかけた。
トランペットの独奏が試合開始を告げると、歓声が響く。そして、友を励ますビートルズの名曲「HEY JUDE」の大合唱で、最高潮の盛り上がりのなか、ウェストブロムウィッチのキックオフで試合が始まる。
開始早々、岡崎がサイドの狭いスペースでディフェンダーをかわして短いクロスボールを入れる。シュートには至らなかったが、そのプレーがレスターの選手たちのスイッチを入れたように思えた。
11分に先制を許したが、攻撃的な主導権を握っているのはレスターだった。14分には岡崎がシュートを放ち、20分には相手ディフェンダーにグッと寄せてボールを奪い、そのままシュート。岡崎がボール奪取に成功するとサポーターが湧く。
それでもレスターは前半で2得点を決め逆転に成功する。
岡崎も、ボールを受けた際のパスさばきに迷いがない。ボールに触る回数が多く、ほとんどミスもない。パスを出したあとの走りにもゴールのイメージが感じられる。ここまで披露してきた、抜群の安定感を今日の試合でも見せていた。岡崎ならではの“巧さ”に目を奪われる。
トッテナムとアーセナルの足踏みで勝ち点差が広がる。
後半開始早々に2-2と追いつかれた後の57分、右のオルブライトからのクロスボールに対して、岡崎が中央でヘディングシュートにいったが、ボールはゴールの外へ。絶好のチャンスを決められず落胆した岡崎は、ペナルティエリア内で正座をするような形になり、しばらく立ち上がれなかった。
そして、いつものように63分にベンチへ退いた。
岡崎不在で攻撃のリズムが悪くなったものの、なんとかレスターは2-2で試合を終わらせることに成功した。そのうえ翌3月2日の試合で、2位トッテナムと3位アーセナルが共に敗れるという幸運に恵まれて、首位キープだけでなく、勝ち点差が3差に開いた。