サッカーの尻尾BACK NUMBER
ゴール数秒前のスアレスを見よ!
CWC史上最多5得点を生んだ意識。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byYoshihiro Koike
posted2015/12/21 12:00
「(以前から)世界ナンバーワンのクラブになりたいと思っていた」とコメントしたスアレス。
スアレス「いつも考えてるのは“裏を取る加速”だ」
助走を始めたのは、イニエスタが前方のブスケッツに縦パスを出した瞬間だ。ブスケッツの足にボールが触れるコンマ数秒前に急激にスピードを上げる。
自身の前方スペース、持ち場から離れていた相手サイドバックの位置、イニエスタからブスケッツに通ったパスの軌道、その3点を同時に視野に入れ裏を取った。
「ゴール前で待っているだけでは駄目だ。走って、スペースを狙って、あらゆる動きをしないといけない」
スアレスを目で追っていると、とにかく止まっていることがない。特にイニエスタ、メッシ、ネイマールが足元にボールを持っている際は、ほとんどの場合、どこかに向けて走っている。
「いつも考えているのは、“Desmarque de ruptura”のことだ」とスアレス。訳すと「裏を取る加速」である。
彼はそれを90分間通して続けることができる稀有な選手だ。
守備時にもその走りは止まらない。決勝でも、相手にまず最初にアプローチをかけたのはスアレス。バルサの守備のスイッチだ。
特別なプレーよりも、その直前の動きこそ真骨頂!
数秒後に生まれるスペースを予知する、その感覚の鋭さは、2点目にも表れていた。
左サイドのネイマールにボールが渡る前、彼はペナルティエリアから数メートル離れた位置にいた。
ネイマールにボールが入る直前、急激にスピードを上げ目前のマーカーを振り切り、右手でポイントを差しながら斜めに走りこんでいく。
緩急の変化に、DFはついていけなかった。
ネイマールはスアレスが欲しがっていた場所へピンポイントのクロスを送り、飛んだスアレスはGKの位置を見てネットへ沈めた。ヘディングの技術の高さはいうまでもない。
準決勝では、イニエスタのパスを胸トラップし、倒れこみながらボレーを決めた。アクロバティックなシュートは目立つ。しかしその予備動作、直前のプレーこそスアレスの真骨頂なのだ。