サッカーの尻尾BACK NUMBER
ゴール数秒前のスアレスを見よ!
CWC史上最多5得点を生んだ意識。
posted2015/12/21 12:00
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph by
Yoshihiro Koike
クラブワールドカップを数週間後に控えたある日、ルイス・スアレスは自身のプレースタイルについて、こんな話をしてくれた。
「僕は、いわゆる典型的なストライカーじゃない。点を取ることも大事だけど、シュート以外に気にかけていることがあるんだ」
そして決勝当日、横浜――。
日産スタジアムのピッチの上、スアレスは試合終了のホイッスルを聞くと、両手を握りしめスタンドを見上げガッツポーズをした。
バルサはクラブワールドカップ決勝でリーベルを3-0で下し優勝。快勝の立役者は、2得点を決めた彼だ。
準決勝と決勝の2試合で5得点。大会史上最高の数字を残しMVPにも輝いた。間違いなく今大会の主役だった。
シュートよりも、そのポジション取りが秀逸。
メッシとネイマールを差し置いて大会の顔となった彼が気にかけていることとは何なのか。
スアレスはいう。
「相手のディフェンスラインの裏へいかに抜けるのか。集中して、マークしてくるディフェンダーの裏を取ること。そのために常に動き続けている」
相手の裏へ抜ける動き、スアレスはこれが非常に巧い。
スペースを見つける嗅覚。抜け出すタイミング。加速と緩急。すべてがパーフェクトで、現トリデンテにおいてもこの点に関しては彼がナンバーワンだ。
決勝を決めたのも、このスアレスの走りだった。シュートも賞賛されるが、見逃してはならないのはむしろ、彼がそのポジションにいた事実だ。
スアレスの1点目。
中盤のブスケッツからダイレクトで裏へ出されたボールに、後方から完璧なタイミングで抜け出しGKと1対1の状況を作りだした。