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クリストファー・マクドゥーガル
『BORN TO RUN』の先に見える世界。 

text by

飯塚真紀子

飯塚真紀子Makiko Iizuka

PROFILE

photograph byMami Yamada

posted2015/09/30 10:00

クリストファー・マクドゥーガル 『BORN TO RUN』の先に見える世界。<Number Web> photograph by Mami Yamada

痛みに苦しみ、走ることをやめた20代。

 マクドゥーガルがランニングを始めたのは10歳の頃だった。'70年代、アメリカで最初のマラソンブームが起きた時、減量のためジョギングをしていた父と一緒に走り始めた。走るのが特に好きなわけではなかったが、バスケットボールやフットボールもしていたので、練習の一環として走った。ところが、20代に入ってから、つま先やかかと、膝など所々の痛みに苦しめられるようになった。

「厚底のシューズにインソールを入れたり、専門医にはコルチゾン注射を打ってもらったりしましたが、だめでした。結局、走らない方がいいと言われて、走るのを止めたのです」

 ランニングを再開したのは、'04年に、雑誌の取材で訪れたメキシコで、タラウマラ族に出会ってからだ。

「タラウマラ族が、男も女も、老いも若きも、みな同じフォームで、同じような薄いサンダル履きで走っているのに驚かされました。アメリカでは、ランナーはそれぞれ、腕や脚の動かし方も違えば、履いているシューズも違うからです」

“裸足ラン”との出会い。

 研究を重ねたマクドゥーガルは“裸足ラン”というスタイルに出会う。それでも、すぐには、裸足で走るということが自分の中では納得できなかった。クッションのある適切なシューズを履いて安定性を保つことが重要だと、ランニング誌や医師から耳にたこができるほど教え込まれていたからだ。

 しかし、自身も裸足ランを学ぶうちに、その良さを確信するようになる。

「裸足ランのいいところは、走るのを止めるタイミングがわかることです。脚が痛くなった時が止め時なのです。中には、速く走れるようになりたいし、マラソンにも出たいばかりに走り続ける人もいますが、そうすると脚を痛めてしまいます。裸足で走り始めて、止めるタイミングがわかるようになるにつれ、裸足ランが身について行くのを感じました」

 裸足ランを始めて10年。マクドゥーガルは、今では、20マイルを、シューズを履いている時と同じスピードで走れるようになった。50マイルランにも参加したが、以前のように脚を痛めることはなくなった。

【次ページ】 “アスレティシズム”を目指して。

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