岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER
岩渕健輔GMが語る熾烈な交渉と感謝。
スーパーラグビー参戦までの道のり。
text by
岩渕健輔Kensuke Iwabuchi
photograph byAFLO
posted2015/09/29 15:35
田中史朗が所属するハイランダーズが、スーパーラグビーで初優勝。日本選抜のチームが参加することになれば、レベルアップは一気に進むはずだ。
日本ラグビー界の総力をあげて……。
交渉の詳細についてお伝えすることはできませんが、議論を重ねていく過程では、日本側が条件を満たせなかった場合、来年からの参戦を再考しなければならない可能性さえ示唆されました。
特に8月に入ってからの交渉は、書面を受け取った3日後に代案の提示を義務づけられるといったように、タイムスケジュール的にも綱渡りを余儀なくされるものでした。スーパーラグビーへの道が事実上閉ざされてというような報道が、新聞メディアなどでさかんになされたのは、皆さんも記憶に新しいと思います。
にもかかわらず、スーパーラグビーに参戦する道を確保できたのは、窮地を乗り越えるべく、日本ラグビー界全体として力を結集し、トップリーグチームを中心に大きな協力が得られたからに他なりません。
もしこれができていなければ、皆さんに今回の報告はできなかったかもしれません。そこまで私たちは追いつめられていたのです。
幸いにして最大の難局は乗り越えることができましたが、私自身はこのことだけをもって安心したり、喜んだりするつもりは毛頭ありません。ある意味、今回のスケジュール発表では、日本が来年からスーパーラグビーに参加するという従来の路線が「再確認」されたに過ぎないからです。
スーパーラグビーに相応しい陣容を。
ラグビー界では、何が起きるか分かりません。2016年2月、スーパーラグビーのグランドに日本のチームが立ち、キックオフの笛が鳴るまでは一切の安心はできないのです。
言葉を変えれば、このような騒動が起きる状況を招いてしまったことを、私たち日本ラグビーの関係者は、誰もが猛省しなければなりません。
今回の交渉で先方の担当者が強調してきたことの一つは、スーパーラグビーに参戦するだけでよしとするのでなく、大会に名を連ねるにふさわしい陣容を整えて欲しいということでした。この基準を満たすことは、日本ラグビーの強化にとっても不可欠です。私たちは何のためにスーパーラグビーに参戦するのかという問題意識を、もう一度肝に命じる必要があります。
日本代表は今、イングランド大会で戦っています。今週末には3戦目のサモア戦が開催されますが、試合に臨む選手同様、私たちも日本ラグビーの灯を未来に繋げるために、全員一丸となって戦っていくことが求められています。私たちは今回の一件を、貴重な糧としていかなければなりません。
(取材・構成:田邊雅之)