岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER
勝っても「格付け」が変わらない!?
世界のラグビー界は驚きの階級社会。
text by
岩渕健輔Kensuke Iwabuchi
photograph byWataru Sato
posted2015/03/11 10:30
岩渕健輔氏がGMについてから、日本ラグビーの強化試合の相手は一気に豪華になったように見える。しかしその陰では、地道な交渉が重ねられていたのだ。
ティアが「慣例」であるという隙をつく。
とはいえ、現状を嘆くだけではなんの解決にもなりません。苦しい状況を打開できるか否かは、「だからこそ、やりようはあるはずだ」という柔軟な発想や、究極のポジティブシンキングができるかどうかにかかってくるのです。
突破口を見出すきっかけとなったのは、ティア1、ティア2という枠組み自体を、違う視点から捉えたことでした。
仮にティア1、ティア2というカテゴリー分けが、チームの実力をきちんと反映した合理的な制度で、マッチメークに関しても強制力を持っているのであれば、取りつく島などまるでありません。
しかし現実にはそうなっていない―-歴史や伝統、格といった価値観に基づく「慣例」を超えるものではない以上、強豪国とのマッチメークを実現させる方法は必ずあるはずだと考えたのです。
試合期間の「隙間」を利用する。
では具体的には、どうやって強豪国とのマッチメークを実現させたのか。
私が採った戦略は二つありました。
一つ目は、試合期間の「隙間」を狙うことでした。
強化試合が開催できる期間は、春秋併せて6週間しかないわけですから、この枠の中で強豪国とのマッチメークを実現させるのは、至難の業になります。ならば南の強豪国が北半球で、あるいは北半球のチームが南でテストマッチを行なう前の週(移動日)に、エクストラの試合枠を設けることはできないだろうかと考えました。
代表的なケースが、2013年の11月に実現させたニュージーランド戦と、2014年の6月に実施されたイタリア戦です。この際には、ニュージーランドとイタリア代表がそれぞれ遠征に向かう途中に、日本に立ち寄ってもらう形を取りました。遠征する途中でテストマッチを1試合、追加で行なうのであれば費用の負担も最小限で済みますし、先方にとっていいコンディション調整にもなる。何より、3週間ずつと定められた強化試合の枠に、バッティングすることもありません。これは画期的なアイディアだということで、世界のラグビー関係者の間でも高く評価されました。
むろん、実現にこぎ着けるまでには幾多の苦労がありましたし、最終的にはワールドラグビー側の承認を得なければなりませんでしたが、露骨に横槍が入るようなことはありませんでした。