岩渕健輔、ラグビーW杯と東京五輪のためにBACK NUMBER
勝っても「格付け」が変わらない!?
世界のラグビー界は驚きの階級社会。
text by
岩渕健輔Kensuke Iwabuchi
photograph byWataru Sato
posted2015/03/11 10:30
岩渕健輔氏がGMについてから、日本ラグビーの強化試合の相手は一気に豪華になったように見える。しかしその陰では、地道な交渉が重ねられていたのだ。
世界のラグビー界は、階級社会だ。
GMを務めていると、こう実感することがよくあります。
たとえばイギリスにスポーツ観戦に行かれたことのある方はおわかりになると思いますが、ラグビーとサッカーなどでは明らかにファンの層が違う。ラグビーは選手もファンも上流階級出身の人々が多いのに対して、サッカーは大衆向けのスポーツとしての色彩が強い。
「ラグビーは紳士がやる野蛮なスポーツ、サッカーは大衆が行なう紳士的なスポーツ」という言葉を耳にされた方もいると思います。これは競技の内容もさりながら、社会的な背景も反映したものなのです。
このような階級社会然とした体質は、試合の現場ではなく、運営側に目を向けるとより顕著になってきます。私がGMとして乗り越えなければならなかった大きな壁の一つも、ラグビー界の階級構造でした。
ラグビー界に今なお存在する、階級社会の分厚い壁。
世界のラグビー界には、各国代表の間でも階級が厳然として存在します。それが「ティア1」「ティア2」というカテゴリー分けです。
「ティア“tier”」とは英語で「階層」や「段」を意味する単語で、最高位である「ティア1」には、北半球の強豪6カ国(イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、フランス、イタリア)と、南半球の強豪4カ国(オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、アルゼンチン)が属しています。それ以外の国が実績などに応じて「ティア2」そして「ティア3」に分類されます。
現在日本は「ティア2」に入っていますが、このカテゴリー分けは日本ラグビーにとって大きな問題となってきました。代表の強化にとって不可欠な強豪国との国際試合も、この枠組みに基づいて組み合わせが決められてきたからです。
事実、W杯を別にすれば、2008年から私がGMに就任するまでの4年間、日本代表が世界のトップ10にランキングされているチームと試合をしたケースは1回しかありませんでした。