野球善哉BACK NUMBER
岩隈、上原、黒田、そしてカーショー。
メジャーの主流は球速から制球力に?
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byAFLO
posted2015/02/01 10:50
レッドソックスでクローザーを務める上原浩治のストレートは、140km前後。しかし四球率はメジャー史上最高レベルの低さで、奪三振も多い。制球力こそが彼の最大の武器なのだ。
変わりつつあるメジャーの投手評価の基準。
メジャーリーガーというと、球速があるパワー系の投手をイメージしてしまいがちだ。日本に比べればそういう投手が多いのは確かだが、先発ローテーションで何年も活躍している選手の多くは、そうではない。
これはメジャーリーグの野球が変わりつつあるからで、「アメリカも、ピッチャーの球速が求められていた時代がありましたが、今はそうではなくなっています。ピッチャーの評価の重要な要素が、球速からコントロールに変わってきている」とMLB関係者の一人は話す。
ベースボールの母国におけるスタンダードは、もはや「球速第一主義」ではなくなりつつあるのだ。
山本昌「アメリカの流れが、遅れて日本にやってくる」
「アメリカで主流になったものが、何年か遅れて日本にもやってくるものだよ」
そう教えてくれたのは、今年50歳のシーズンを迎える中日の山本昌投手だった。
山本昌投手は入団5年目のシーズン、ドジャース傘下のマイナーリーグのチームに留学した経験がある。後に彼の代名詞ともなるスクリューボールも、アメリカで覚えたものだ。彼はその時の新鮮な経験が自身の成功につながっていると話したうえで、日米のトレンドにはタイムラグがあると語っている。
「投げ込みの数なんかもそうですし、わかりやすいのはチェンジアップとかね。僕がアメリカに留学した時は、アメリカの投手はみんなチェンジアップを投げていて驚きましたけど、10年後には日本人も投げるようになっていました。アメリカで主流になっていたものが、数年後に日本でも主流になるというのは僕の経験上あるんです」
山本昌投手の指摘は日本でもいずれ「球速至上主義」が去る可能性を示唆しているが、そのときを悠長に待っていいのだろうか。