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今年は優勝争い間違いなしの広島。
2016年問題に備えて若手育成を!
posted2015/02/02 10:30
text by
小関順二Junji Koseki
photograph by
Nanae Suzuki
「ずっと黒字経営だからね。黒字は巨人、阪神、広島だけ。あとは全部赤字で親会社が埋めている。(中略)耕平さんは12球団で唯一、野球が純粋に商売だったし、何回も優勝した。球団が育ったんだよ」
'11年12月11日から12年2月25日までの約2カ月間、中国新聞は「カープV逸20年 私の提言」というコラムを連載した。3年連続5位に低迷したシーズンオフの企画で、私の意見も12月25日付けの同紙に「裏かき低迷 実績重視を」の見出しで紹介された。それより1週間前に掲載されたのが最初に紹介した文章で、執筆者は渡邉恒雄・読売巨人軍球団会長(ちなみに文中の「耕平さん」とは先代の広島オーナー、松田耕平氏のこと)。
広島の黒字経営については私も10年以上前に聞いたことがある。
球団関係者曰く「年間100万人観客が入ればうちは黒字なんです」。
今の広島は年間100万人どころではない。昨シーズンは190万4781人の観客動員を記録、これは前年比プラス21.7%というとんでもない数字だった。この勢いは今年も続き、ネット裏最前列のロイヤルボックスなど内、外野7席種、計8300席が1月下旬に早くも完売している。この8300席は年間シートのことだから、単純に考えれば今年はすでに約60万人の観客動員が決まっているということである。
今シーズン、間違いなく広島は優勝争いに絡む。
好調な観客動員を支えているのは、第一にチームの上昇機運である。過去2年はAクラスに定着、今季はメジャー挑戦が確定的だったエース・前田健太が残留した。さらにメジャーで7年間プレーして79勝79敗、防御率3.45という成績を残した黒田博樹が戻ってきた。
広島に在籍していた'97~'07年には通算103勝しているので、ファンが2ケタ勝利を期待するのは当然である。私などは今季18勝して日米通算200勝を達成してほしいと思っている。
今シーズン、間違いなく広島は優勝争いに絡むだろう。'91年以来24年ぶりの優勝も射程内に入れている。しかし、問題は来年以降である。広島が現在のような景気のいい話題に沸くことは、'16年以降しばらくないと思う。ポスティングシステムを利用した前田のメジャー挑戦問題が今オフには再燃するだろうし、今年40歳になる黒田が来年以降もチームの屋台骨を背負うような活躍をすると考える人はよほどの楽天家である。