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真の「自分たちのサッカー」とは?
山形が証明し、千葉に欠けたもの。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byNoriko Nagano
posted2014/12/11 16:30
2005年、2006年とナビスコカップを連覇した「名門」ジェフ千葉は来年、J2での6シーズン目を迎える。遠ざかるJ1の記憶はまだ千葉に力を与えてくれるのだろうか。
変化しなかった山形と、変化した千葉。
「J1昇格」というあまりにも大きな成果を目の前にした一戦は、特異な緊張感の中で行なわれた。それでいて「やり方」を変えなかった山形に、「普段とは違う戦い方」で臨んだ千葉が敗れた。内容的に大味な90分間は、山形にとって望むところであり、千葉にとってそうではなかった。その違いが、勝敗を左右した。
山形が仕掛ける前線からのハイプレスは、千葉にとって大きな脅威だった。それをまともに受けてゲームの主導権を奪われないためにも、立ち上がりは相手のプレスをかわすセーフティーでシンプルなロングボールが有効と考えた。
その作戦は一定の効果を発揮し、序盤の千葉は大舞台の緊張感に浮き足立つことなく、迷いなくボールを前線に放り込んだ。選手たちの動きに、重さは感じられなかった。
「シンプル」は徐々に「雑」に変わってしまう。
しかし10分、15分、20分と時間が経過しても、その内容に変化はなかった。すると序盤こそ「リスクを回避するためのシンプルなパス」に見えたロングボールが、次第に「リスクを恐れた雑なパス」に変わってくる。このタイミングで「自分たちのサッカー」にシフトできなかったことが、千葉にとって大きな誤算だった。
山形の石崎監督が言う。
「やはりプレーオフ独特の雰囲気というのか、どうしてもなかなかボールをつなげないとか、お互いに蹴り合ってしまうとか、そういうところが今日のゲームはちょっとあまりにも多すぎたと思います」
しかし山形にとって、そうした展開は慣れっこである。むしろハイプレスを貫いてロングボールを蹴らせ、相手をバタつかせることに大きな意味がある。相手に“蹴らせる”タイミングが明確になれば、ルーズボールはことごとく山形の足下に収まった。
迎えた37分、そこまで「セーフティー」に徹してピンチをほとんど招かずにきた千葉だったが、セットプレーから失点を喫する。最も避けたかった先制ゴールを奪われ、独特の緊張感による負荷はチームにさらに重たくのしかかった。このゴールが、ゲームプランを大きく狂わせた。