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無良崇人の進化を支える“成長志向”。
五輪から「逆算」しない、という道。 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2014/11/08 10:40

無良崇人の進化を支える“成長志向”。五輪から「逆算」しない、という道。<Number Web> photograph by AFLO

オフシーズンにはイリヤ・クーリックの指導を受け、プログラムも変更した無良崇人。まだ23歳、大きな伸びしろが彼には秘められているはずだ。

ほとんどの選手は、五輪から「逆算」する。

 昨シーズンの秋に岡山を訪ねたとき、無良を指導するコーチであり、父でもある隆志氏はこう言った。

「オリンピックを獲りに行きますとか、そういう言葉が僕らにはないんですね」

 その真意は、続けた言葉にあった。

「もし今シーズンでやめるんだったらね、それこそ意地でも代表を狙いなさい、死ぬまでやりなさい、という話になるでしょう。むしろ、オリンピックのシーズンであっても、どうやって選手としてステップアップしていけるかが大事だと考えています」

 そして、こう口にした。

「まだ、未完成の選手ですしね」

 コーチの言葉にうかがえたのは、オリンピックシーズンも過程であるという考えだった。

 多くの選手は、「逆算」でプログラムやコンディションを組み立てていく。例えばオリンピックを一大目標に置いて、代表選考のスケジュールを考え、ピーキングを考える。1シーズンにとどまらず、4年単位での組み立てもする。

 だからこそ、オリンピックに出場できた、できなかったにかかわらず、オリンピックが競技生活の一つの区切りになる。そこから先を目指していくのか、競技生活にピリオドを打つのか、いずれにせよいったん立ち止まる選手が多いのはこのためだ。

「逆算」でなかったからこその復活。

 もちろん無良自身も、オリンピック代表候補として注目を集めていたシーズンだけに、オリンピックを意識していなかったわけではない。むしろ、目標として進んできた。

 しかし一方で、無良を見続けてきたコーチは、オリンピックすらも過程であると捉え、どこまで成長できるのか、先へとつながるシーズンとなるのかを根底に置いて指導を行なってきた。

 思うような演技ができないシーズンを過ごし、日本代表を逃し、引退もちらつく中で、それでも現役続行を決めることができた理由には、コーチの姿勢もあった。

 つまり、逆算でスケジュールを組み立ててこなかったからこそ、全日本選手権からさほど間もない四大陸選手権でも優勝でき、今シーズンへもつながっている。

 無良の次の大会は、11月28日に開幕するNHK杯となる。

 本人は「重圧を感じています」とコメントしているが、スケートカナダで得た手ごたえと確信とともにどのような姿を見せるのか。そしてこれからどこまで成長していけるのか。

 楽しみだ。

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