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パトリック・チャンから高橋大輔へ。
ライバルから届いた「ありがとう」。

posted2014/11/07 10:30

 
パトリック・チャンから高橋大輔へ。ライバルから届いた「ありがとう」。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

2010年の世界フィギュアスケート選手権(トリノ)。高橋大輔はアジア初、日本人初の世界王者となり、パトリック・チャンは2位となった。

text by

田村明子

田村明子Akiko Tamura

PROFILE

photograph by

Takuya Sugiyama

雑誌『Sports Graphic Number』864号に掲載されたコラム
「高橋大輔の現役引退に、盟友チャンが送った言葉」。
チャン選手が尊敬する高橋選手に、真に伝えたかったことは何なのか?
今回はWeb用に加筆修正されたバージョンを特別配信いたします!

 10月14日、高橋大輔が岡山市でアマチュア競技からの引退を宣言した。

 怪我の影響でソチ五輪6位に終わった後、1年間競技を休むと宣言。だが「1年かけて考えようかと思ったけれど、やっぱりシーズンが始まる前に言おうと思った。(シーズンがはじまると)他の選手がモチベーションを上げていく中で、迷惑をかけたくないなと思った」と会見で語った。日本のエースとして、常に周りへの配慮を忘れなかった高橋らしい決断だった。

 3回の五輪を戦ってきた28歳の高橋の引退宣言は、まったく予想できないものではない。それでも後輩からの人望も厚く、日本男子を世界のトップレベルまで引きあげてきた高橋の引退を惜しむ声は多い。

 長年、高橋の良きライバルとして戦ってきたカナダのパトリック・チャンからも、筆者を通してメッセージが届いた。

「ダイスケはぼくのお手本でした」とチャン。

 チャンから届いたEメールはこうはじまっていた。

「ダイスケにはまず最初に、ありがとう、と感謝の気持ちを伝えたいです。彼はフィギュアスケート界全体に大きな貢献をしてきた選手。そしてぼく自身も、いつも彼のことを尊敬し、お手本にしていました」

 高橋とチャンが初めて競技で顔を合わせたのは、2006年長野で行なわれたNHK杯でのことだった。20歳の高橋が優勝し、ジュニアから上がったばかりの15歳のチャンは7位だった。

 それから今日に至るまで、高橋とチャンは世界選手権とGPファイナルでそれぞれ2回ずつ、四大陸選手権とスケートカナダで1回ずつ同じ表彰台に上がっている。

 チャンはかねてから「ダイスケは良い友人。大会で彼と顔を合わせるとほっとする」と語り、2人が会見で並んで座るとライバル同士ながらもいつも和気藹々とした雰囲気を醸し出していた。

【次ページ】 新採点方式に対応できた数少ない選手だった。

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