野ボール横丁BACK NUMBER
岡本和真の巨人入りを歓迎する理由。
大学・社会人で右の大砲は育たない?
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKyodo News
posted2014/11/06 10:30
高校通算73本塁打を放った岡本和真。背番号は長嶋茂雄元監督の3と原辰徳監督の8を合わせた38に決まり、期待の大きさが見て取れる。
アマチュア野球のトーナメント制が余裕を奪う。
スラッガーとは、そもそも引っ張り屋である。したがって左のスラッガーの場合は進塁打をねらうことと、長打をねらうことは、さほどぶつかり合わない。ところが右打者の場合は、明らかに自分を殺すことを求められる。ここに右のスラッガーのジレンマがある。
アマチュア野球で進塁打がことさら賞賛されるのは、いずれも日本一を決める大会がトーナメント方式だからだ。どうしても野球が慎重になる。大学野球はリーグごとのリーグ戦がメインだが、入れ替え戦が行なわれる東都大学リーグなどは、実質トーナメントのようなものだ。そんな環境では、将来性を見据え、伸び伸び打たせている余裕などないのだ。
Aは続ける。
「最近、プロで成功した社会人出の長打の打てる右打者っていうと、長野(久義=巨人)とか清田(育宏=ロッテ)ぐらいですよね。でも彼らは、打てるし、守れるし、走れる。社会人ではそういう選手しか重宝されないんです」
社会人と独立リーグ、正反対の両者の哲学。
社会人時代、自分を見失ったAは鬱病になり体重が激減。このチームにいる限り、長打力が売りの自分はプロ野球選手にはなれないと悟り、会社を離れることにした。
「辞めるとき、監督に『言いたいことがあれば言ってみろ』と言われたので、それまでたまっていたものが一気にあふれ出して。興奮していたので何を言ったかはほとんど覚えてないんですけど、監督に『おまえがプロ野球選手になんかなれるわけないだろ』と言われたのだけははっきり覚えてます」
その後、Aは地元の独立リーグのチームに入団し、初めて野球をする喜びを知ったという。
「独立リーグは基本的にNPBに送り込むための組織ですからね。当てにいって、ボテボテのヒットなんか打っても、逆に『そんなんでプロにいけるわけないだろ』と怒られる。自分の探していた野球があった、と思いましたね。独立リーグでは送りバントのサインなんて、ほとんどないんです」