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セカンドに負傷者が続出する阪神。
岡田彰布流リスクマネジメント術とは。
text by
岡田彰布Akinobu Okada
photograph byNaoya Sanuki
posted2014/05/26 10:40
開幕時は外野手登録ながら、5月からケガ人続出のセカンドに抜擢、攻守で活躍を続ける大和(右)は、樟南高時代に甲子園で見せた守備力に岡田氏が注目し、阪神が指名した選手だ。
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【2】 主力選手が負傷で離脱……監督は何をすべきか?
~ケガ人は想定内!?~
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2014年のペナントレースがスタートして約2カ月が過ぎたが、主力選手のケガに泣かされているチームが早くも見受けられる。阪神は開幕3戦目にして西岡剛が捕球の際に福留孝介と接触。長期欠場を余儀なくされ、西岡の代わりにセカンドを任された上本博紀までもが右手親指の骨折で一時離脱……。幸いにして交流戦から1軍に復帰できたから良かったものの、選手のケガという想定外のアクシデントに直面したとき、監督はどのように対処すべきなのだろうか?
ケガ人が出ることは想定内やで。
岡田:監督としての経験を話せば、ケガ人が出ることは想定内やで。
シーズンを通して、主力全員がケガなくプレーできるのが理想やけど、そんなことはほとんどない。ケガ人が出ることをつねに想定して、代わりとなる戦力をきっちり把握しておくのは監督としての当然の務めや。
もし戦力が足りないようであれば、スーパーサブ的な選手を補充しておかないといかんしな。そのためにチームには2軍を含めて70人もの選手がおるわけやし、ケガ人が出てからバタバタしてるようでは遅いで。
──アクシデントを想定して、戦力を整えておくことが肝要なんですね。
岡田:それに主力選手のケガは、若手にとってみたらチャンスでもある。若い選手たちはポジションを奪ってやろうと虎視眈々とねらっているけど、そう簡単にチャンスは回ってこない。ポジションが固定化されているチームでは、誰かがケガで離脱することでもない限り、なかなか若手が起用される機会がないわけやから。
チームにとっても、主力のケガは若い力を試す格好の機会になる。そういうふうに考えると、必ずしもマイナスのことばかりではないんよ。
──ピンチをチャンスに変える。
岡田:そういう考えでおらんとアカンよ。本音では「主力の離脱は痛いなあ……」と思っていたとしても、「若いやつが頑張ればいい」と奮起を促すのが監督の役割よ。
もともと大和をセカンドにすればいいと考えていたんよ。
──そうは言っても、西岡、上本のケースのように、同じポジションの選手が続けて負傷した場合は、監督としては頭が痛いでしょう?
岡田:ちゃんと大和がいたやんか。大和がスーパーサブ的な役割を果たした。
もともとオレは大和には内野を守らせて、若い選手を外野で起用したほうがいいと思っとったしな。有事の際には大和をセカンドにすればいいとは考えていたんよ。実際、大和をセカンドで起用することで、俊介や緒方といった若い選手を試すこともできた。
──二重、三重の備えが必要ということですね。しかし、ヤクルトのように毎年のようにケガ人が続出すると、さすがにお手上げでしょう? 去年もキャンプ中から選手のケガが相次いだし、今季も去年の新人王で最多勝投手の小川泰弘が、4月18日の阪神戦で「右手有鉤骨鉤骨折」の重傷を負ってしまいました。
岡田:小川のケースはアクシデントだったから仕方がない部分はあるけど、たしかにヤクルトの場合は、ちょっと質が違う問題のような感じもするなあ……。1軍の投手陣だけでなく、ファームの若手にも故障者が続出してるやろ?
──ドラフト1位入団のルーキー、杉浦稔大投手も3月に右肘靭帯断裂が判明して、現在リハビリ中です。
岡田:アクシデントによるケガは仕方がないけど、コンディション管理の甘さからくるケガは看過できない。ケガをさせない、より悪化させないためにコンディショニング担当のコーチやフィジカルトレーナーがいるわけだし、そっちの部門の問題になってくる話だよ、これは。トレーニングやケアを含めて、選手の体作りを再考する必要があるかも分からんね。