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軽量級から、スラッガーの指名へ!
強い広島の裏に、ドラフトの変化が。
posted2014/05/23 11:00
text by
小関順二Junji Koseki
photograph by
Hideki Sugiyama
昨年のチーム成績、69勝72敗3引き分け、勝率.489は胸を張れないが、'98~'12年まで15年続いたBクラスから脱し、強かった'70~'80年代の勢いを取り戻しつつある広島。
昨年の成績を詳しく見るとチーム防御率3.46(リーグ3位)に対して、チーム打率.248は中日に次いでリーグワースト2位だった。
しかし、この非力な打撃が改善されつつある。チーム打率.263はリーグ5位だが、本塁打49はヤクルトの50本に次ぐ2位、得点202はヤクルト236、阪神208に次ぐ3位と好調で、首位独走の大きな要因になっている(成績はすべて5月20日現在)。
エルドレッド 打率.348、本塁打15、打点47
丸佳浩 打率.306、本塁打 6、打点20、盗塁7
菊池涼介 打率.304、本塁打 5、打点20、盗塁9
(以上規定打席到達)
松山竜平 打率.333、本塁打 4、打点14
キラ 打率.313、本塁打 4、打点17
堂林翔太 打率.255、本塁打 4、打点15
昨年は打席内で「動いた」エルドレッド。
以上に挙げた主な選手の中で目を引くのはエルドレッドで、打撃3部門中で打率は3位、本塁打、打点はリーグ1位と打ちまくり、広島打線の牽引役を果たしている。'12年シーズン途中の入団以来、今季が3年目の33歳は最初から猛打を発揮していたわけではない。
昨年までは、打席の中でよく動いていた。たとえば耳の位置にあったグリップは打ちに行くとき胸のあたりまで下がっていた。さらにバットを引く動きやステップの踏み出しがいかにも急で、これが緩急の攻めへの対応を難しくさせていた。今年度版の『プロ野球スカウティングレポート』(廣済堂出版)にはエルドレッドを次のように紹介した。
「バットを引く動きにもステップにもゆったりしたところがないため、タイミングを外されてしまうと体を残すことができない。腕がきれいに伸びるコースのボールしか打てない典型的なスイング」
このエルドレッドが、今年は動きが小さくなった。グリップの上下動が小さくなり、バットの引きやステップの動きもゆるやかになったのだ。