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新エンジンで今季のF1は波乱必至!
可夢偉が挑む、ゼロからのスタート。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byAFLO
posted2014/03/09 10:45
バーレーンでのテストでもそれなりに成果を見せた小林可夢偉のケータハム。昨年はコンストラクターズポイントで最下位となってしまったが、可夢偉をドライバーに迎え反撃を期す。
いよいよ3月14日に2014年のF1世界選手権がオーストラリア・メルボルンで開幕する。
しかし、その準備が万全かと問われれば決してそうではない。それが昨シーズンまでのF1との最大の相違点であり、今シーズンのF1の最大の見所となるであろうと言ってもいいだろう。
その最大の理由が、レギュレーションが大きく変更されたことであるのは間違いない。特にエンジンとエネルギー回生システムを組み合わせた複雑なパワーユニットに、各エンジンメーカー、そして各チームが振り回されているというのが現状である。
その中でも、特に目立ったのがルノー・エンジン勢の出遅れだ。
昨年まで4連覇しているレッドブルの、シーズン前に行なった3回のテストでの周回数は合計で319周。昨年は同じ3回のテストで、合計1008周を走破していたから、約3分の1の距離しか走り込めていない計算となる。
走り込み不足によって生じる問題は、単に信頼面だけではない。今年のF1はレース時に使用できる燃料が100kgという制限がある。昨年までは無制限(実際には約150kgを使用していた)だったから、燃費の管理が例年以上に重要となるのだ。
ただ燃料をセーブするだけならこれまでもテレメトリーで管理できたが、さらに今年は2つのエネルギー回生システムを多用しながら、ラップタイムをできるだけ落とさずに100kgの燃料でいかに走り切るかが勝負となる。パワーユニットのトラブルによって、レースシミュレーションが行なえなかったレッドブルは、燃料のマネージメントという部分でも不安を抱えながら開幕戦に臨むことになる。
近年高かった完走率も、今年は果たして……?
近年のF1の特徴のひとつに、高い完走率があった。22台がエントリーした昨年のF1で、20台以上が完走したレースはじつに7度もあった。もっとも低い完走率となったモナコGPでさえ、16台が完走。タイヤトラブルが多発したイギリスGPでさえ、20台が完走。全19戦の平均完走台数は19.26台だった。
信頼性の向上は、エンジニアたちの努力の賜物だが、一方で筋書きのないドラマを期待する視聴者にとっては結果的に刺激に欠けるレースが続いていたことも確かである。昨年、デビューイヤーで史上初の全戦完走を果たしたマックス・チルトン(マルシャ)の記録がそれほどニュースにならなかったのも、高すぎる完走率が影響していたのかもしれない。
そういう意味では、今シーズンのF1はレースをやっているチーム関係者にとっては大変かもしれないが、観ている側にとっては目が離せないレースになることだろう。