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55本で21得点の男、新潟・川又堅碁。
その「野生」が代表には必要だ!
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2013/11/15 10:30
後方からのロングフィードを、一人でゴールに結びつける様はまさにワンマン・アーミー。新潟の攻撃を一手に担う川又堅碁がブラジルのピッチに立つことはあるのか。
「めっちゃダサいシュートも、価値は一緒だと思っている」
好調なストライカー自身にも、思いがけずチャンスが巡ってくることがある。
「ゴールを決めているときって、自分の前にボールが転がってきたりするんですよ」
と川又は言う。プレーに迷いのないストライカーは、得点を奪うことに集中できている。セカンドボールやこぼれ球への反応が素早くなる。ゴールを狙えるポジションへの動き直しもスムーズなのだ。
ふたつ目は、彼が持つ野性味である。
「自分のなかでは、どんだけみんなが絶賛するんやってシュートも、めっちゃダサいシュートも、価値は一緒だと思っている。泥臭くても、1点は1点すよ」
距離感、連動、角度といったキーワードが形成する日本のパスサッカーは、個々の高い技術を生かす有効な手段となる。それは間違いない。ただ、ここ最近のゲームでは、攻撃の行き先を見失っている。どんな形であれ得点を奪うという迫力が、パスワーク重視のスタイルによって削ぎ落とされてしまっている。
相手守備陣からすると、威圧感のないサッカーである。それだけに、ゴールへの飽くなき欲求を身体中から発散する川又は、攻撃のカンフル剤になりうると思うのだ。
「得点王になっても、代表に入るというのはまずない」
とはいえ川又自身は慎重だ。日本代表入りについて聞かれると、ほとんど間をおかずに「いやっ、まだまだだと思う。ホントにまだまだっすよ」と答えた。
「いまはただ単に点を取れてるだけやと、自分では思っているので。もっともっといろんな部分で、レベルが上がらないと。いまはそのレベルに達してないと、自分では思ってます。得点ランキングの上位に入っていなくても、すごい選手はたくさんいますし」
と、否定的な言葉を繰り返している。10月上旬に明かした心境である。
「いくら点をとっても、もし得点王になっても、代表に入るというのはまずないと思います」
とも、彼は続けている。1カ月以上が経ったいまも、おそらく心境の変化はないだろう。くっきりとした瞳には謙遜、遠慮、慎重といった色ではなく、周囲の期待と一定の距離を置く冷静さがにじんでいたからだ。