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<『キャプテン翼』作者が語る> 高橋陽一 「カール・ハインツ・シュナイダー誕生秘話」
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byYoichi Takahashi
posted2013/09/18 06:01
司令塔シェスターのモチーフは、リトバルスキー。
しかもシュナイダーはハンブルガーのユースチームに所属している少年であるにもかかわらず、自分の将来のことを見据えて、バイエルンに移籍する道を選ぶ。これも実にドイツらしい、合理的な考え方の表れでしょう。
もともとハンブルガーは、日本人GKの若林源三に武者修行を積ませる場所として選びましたが、ドイツ人の若手がステップアップしていく過程を考えた場合、いきなりバイエルンではないだろうという判断もありました。かつてのハンブルガーは強豪でしたしね。
キャプテン翼では、シュナイダー以外にも、ブンデスリーガの名物キャラが登場します。ブレーメンで司令塔を務めるシェスターは、リトバルスキーをモチーフにした選手。守護神のミューラーには、ゼップ・マイヤーやシューマッヒャーなどを輩出してきた、GK王国としての伝統を背負わせました。職人的МFのヘルマン・カルツや、長身FWのマーガスなどは特定のモデルがいたわけではないものの、全盛期のブンデスリーガには、それくらい個性的で魅力溢れるタレントが揃っていたのはたしかです。
逆にイングランドなどは印象が薄かったので、強烈なキャラクターはあえて登場させませんでした。今から翼を描き始めるのであれば、話は大分違ってくるはずです(笑)。
奥寺さんと尾崎さんの直接対決を観戦して感銘を受けた。
シュナイダーを翼のライバルに据えた背景には、メディアの問題も関係しています。残念ながら当時の日本では、あまり海外サッカーの情報が入ってこなかった。でも奥寺康彦さんや尾崎加寿夫さんなどがプレーしていたこともあり、ブンデスリーガの情報は比較的伝わってきやすかったんです。
加えて私自身、'83年にドイツに取材に行き、ブレーメンにいた奥寺さんとビーレフェルトの尾崎さんが直接対決した試合を観ました。
生で見るブンデスリーガには感銘を受けましたね。練習場の設備や育成のシステムは最高に充実していて、スタジアムも素晴らしい。そして週末になると、家族連れで試合を見に来られるような雰囲気もある。翼の取材ではブラジルも訪れましたが、総合的な環境はドイツの方が洗練されていたし、サッカーが本当に根付いているのを肌で感じました。
と同時に実感したのは伝統の重みです。ブンデスリーガのクラブハウスに行くと、古いトロフィーや写真が沢山飾られたりしていて、歴史の長さを否が応でも思い知らされる。