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大豊作と言われた2010年ドラフト。
セ・リーグで最も得をした球団は?
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byKYODO
posted2010/11/04 10:30
巨人から1位指名あいさつを受けた中大・澤村拓一投手。原監督のサインとドラフト会議で使ったパソコンを記念に贈られ、笑顔を見せる
即戦力右腕を揃えたが競合を恐れた横浜……60点
大石達也を外して本格派右腕の須田幸太(JFE東日本)を1位指名し、2位に東京六大学リーグを代表する本格派・加賀美希昇(法大)、4位に関西六大学リーグの記録男・小林寛(大阪学院大)というように、即戦力候補の右腕をずらりと揃えた。
須田の早大時代は体の線の細さがストレートの威力にそのまま反映され、ドラフト候補に挙げ切れなかった。しかし、社会人入りして体が大きくなり、ストレートに見違えるような力感が備わってきた。都市対抗の新日鉄広畑戦では最速145キロを記録し、これに横ブレしない縦変化のスライダー、カーブを交え、強力打線を4安打、1失点に抑え完投勝ちしている。
ただ、プロの打者との比較で見ると、まだまだ力不足。単純にストレートの速さが物足りないし、四隅を突くコントロールにも緻密さがほしい。今の須田は体格的にも球威的にも今季2勝3敗の藤江均クラス。2人とも将来性の高い右腕だが、3年連続90敗以上の最下位球団なら、競合を恐れず、外れ1位で秋の充実度が高い塩見貴洋(八戸大)に向かってほしかった。
クジ運は悪かったが指名は納得のヤクルト……55点
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斎藤佑樹を外し塩見貴洋を外し、外れ外れ1位で山田哲人(履正社・遊撃手)の交渉権をオリックスとの競合の末、獲得した。このクジ運の悪さが低評価の理由である。
山田の指名は納得できる。現在、ヤクルトの最も弱いポジションはショート。今季、同ポジションを主に守った3人の成績を紹介しよう。
藤本敦士 試合出場62、守備機会256、守備率.957
川端慎吾 試合出場54、守備機会208、守備率.981
鬼崎裕司 試合出場53、守備機会118、守備率.958
川端が頭1つリードしていることがわかるが、全幅の信頼を置くには至っていない。ここにドラフト1位選手を入れて、川端、鬼崎の起爆剤にしようという意図がうかがえる。もちろん、山田が将来の正遊撃手候補であることに変わりはない。
得点を低くしたが、ヤクルトのドラフトは非常に面白い。それは1年ごとに上位指名が即戦力(大学生・社会人)と高校生に振り分けられているからだ。
'08年 1位赤川克紀(宮崎商・投手)、2位八木亮祐(享栄・投手)
'09年 1位中澤雅人(トヨタ自動車・投手)、2位山本哲哉(三菱重工神戸・投手)
'10年 1位山田哲人(履正社・遊撃手)、2位七條祐樹(伯和ビクトリーズ・投手)
'05~'07年の3年間は分離ドラフト(高校生と大学生・社会人を分けて指名していた)が行われていて統計が取れないが、それ以前にも交互に高校生と即戦力を取り分けていた時期があり、その独特の方針はなかなか興味深い。