オフサイド・トリップBACK NUMBER
代表監督選考で日本とこんな差が!
韓国サッカー協会が南アで得た確信。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byGetty Images
posted2010/09/17 10:30
韓国サッカー界に映った、日本サッカー界の現状。
――日本でもスペイン流の攻撃サッカーへの憧れは強いし、協会側もスペイン人監督を招こうとしていたと言われている。ところが最終的にはイタリア人監督のザッケローニが就任する形になった。韓国の状況と比べると皮肉な感じもするけど、こういう日本の状況は韓国でどう報道されたのだろう? 本来希望していたスペイン人ではなく、イタリア人が監督になったことを疑問視するような記事は?
「韓国のジャーナリストは事実を冷静に報道しただけで、新聞も日本協会の監督選びの過程を問題視するような記事は掲載していない。インターネットユーザーやブロガーの中には、『ユベントスを7位に落とした監督』とか『守備的サッカーの信者』とかいうようなネガティブなことを書きこんだ人間もいたけどね」
――いずれにしても韓国側は決断が早いし、人選も含めて目指すべきサッカーの方向性もよりはっきりと認識しているように見える。日韓のこの違いはどこから来るんだろう?
「それは難しい質問だね。実際、ひとりのサッカージャーナリストとして言わせてもらうと、僕は時々日本協会を羨ましく思うことがあるんだよ。長期的な視野に立って物事を動かしているように映るし、仕事の仕方もシステマチックな感じがするからね。
逆に韓国協会は、行き当たりばったりで物事を即決してしまうことが時々ある。監督を決めるときには特にそうだ。メツやマッカーシーを呼ぼうとした時のように昔から交渉が下手で、アマチュアのようなミスも何度も繰り返してきた。
韓国協会は決断が早いような印象があるけど、それは外国人監督に関するデータベースをたいして持っていないことや、トップクラスの監督を連れてくることができないことの裏がえしだと思う。監督人事がすぐに決まるのは、簡単に雇える人間だけを雇ってしまうからさ。しかも技術委員会の発言力は決して強くないから、ほとんどの場合は協会の上層部が最終決定を下す形になってしまうんだ」
――隣の芝は青いというか一長一短というか、お互い、なかなかうまくいかないもんだね。
「まあ日本にとっても韓国にとっても、代表をどうするかっていうのは、それぐらい大変な問題だから(笑)」◇ ◇ ◇
試行錯誤を続ける日本代表と、迷いなく進む韓国代表。李記者のコメントからは、このような捉え方が一種の「幻想」に過ぎなかったことが理解できる。
しかし少なくとも今の韓国代表が、強化の方向性と監督人事の方針に関して、一つの答えを見出しつつあるのは間違いない。韓国は日本にとって「最も近くて最も遠い国」であり続けている。だが「永遠のライバル」から学べることは、決して小さくないのではないだろうか。